敷金問題研究会
http://hccweb5.bai.ne.jp/~hea14901/

敷金はこうして取り戻せ! (かもがわブックレット)

敷金はこうして取り戻せ! (かもがわブックレット)

くらしの判例集
http://www.kokusen.go.jp/hanrei/index.html
 国民生活センター判例集などから収集した消費者判例のうち、注目され、かつ消費生活 や消費者問題に関して参考になるものを、消費者問題を専門とする学者・弁護士による解説等をつけて紹介するコーナーです。 発表日順に掲載しています。


消費者契約法は、平成12年5月12日に公布されました(平成12年法律第61号)
http://www5.cao.go.jp/2000/c/0512c-keiyakuhou.html


http://www.kansai.ne.jp/tomatohm/z_hint/newpage117.htm
このホームページへの相談=問合せで、一番多いのがこの敷金返金に関するトラブルです。不動産の契約関係は、地域ごとの慣習が、色濃く反映されます。
このホームページの相談は、主に阪神間の地域=敷金があり、そして、敷引(解約引)の慣習のある地域(そして更新料が無い)に関して取り扱っております。 阪神間では、高額の敷引をみなさん契約時に支払っております。さらに原状(現状)回復費用を請求する2重請求を行う貸主は100%裁判でも負けるというのが、弊社HPの趣旨です。勘違いなさらないでください。

賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン―敷金返還と原状回復義務

賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン―敷金返還と原状回復義務


http://www.kansai.ne.jp/tomatohm/z_genzyou/new_page_56.htm
主に、阪神間についての不動産=賃貸住宅のトラブルについての解説です。

特に原状回復問題は、金額が大きく、消費者にとっては慣習が判りにくく厄介な問題となっている様です。

幸い阪神間では、敷引という制度があり、この金額が大きいのと契約時に決めてしまう為、解約時はトラブルになることが少ない様です。

阪神間では、契約時に敷引として、家賃の4−6ヶ月の高額の礼金
支払う形でないと契約できません。そういう慣習ですから、逆に
解約時に、揉め様は大変少ないのです。

原状回復問題は、原則、通常損耗は、貸主負担ですが
特約とか、その地域に借主負担の慣習があった場合どうなるか
というところが問題点です。
こちらでは、各地域の慣習とか
裁判になったら、勝つか負けるかは判りません。
微妙な問題です。判例も分かれています。

基本的に
払うから損ではなく、
家賃に含まれているか
契約時払うか
解約時払うか
と考えれば、合理的で損は無いと思います。

本当に損なのは、
契約時に払ってるのに、解約時、また、ぼったくられた
とか
家賃に入っているのに、解約時払わされたという
2重払いが発生している場合です。

皆さんが怒るのは、この様に契約時に納得出来ない形
=だまし討ちの場合です。

基本的に、契約書に特約として明記してあって
慣習として、地域に根付いている形に対して
因縁をつけるような姿勢は如何かと思います。
最近、そういう問合せが増えてます。


賃貸住宅を借りて使っていると、ここ彼処が痛んできます。
その場合、キズの痛み方により、考え方が二つに分かれてきます。
一 故意過失で痛めた場合。
二 自然損耗 これは普通に使っていて、自然に少しづつ痛む分です

 この一つ目の故意過失は、借主が「ガラスを割った」とか、「お風呂を空だき
した」とかは、借主の過失なので、借主負担ということで問題はありません。

 二つ目の自然損耗とは、普通に使っていて痛む分です。つまりクロスが日焼け
とか手あかで少しづつ汚れるとか襖が破れるとか畳のゴザが破れてくるとかの通
常損耗の痛みをどう取り扱うかが、現状回復問題そのものであり、その自然損耗
を貸主、か 借主か どちらが負担するかという問題でもあります。
そしてその解決方法は、その地域の商慣習に因るところが大きいのです。



この原状回復費用の商慣習は、以下3方式が考えられます

家賃精算方式 これは自然損耗が、家賃に含まれているという法律上の本来の立場(原状回復費用上乗せ賃料)
定額精算方式 契約時にあらかじめ敷引(解約引)と称して、原状回復費用金額を予め決めてしまう方式 と 
実費精算方式 解約時に実際にかかる修理代金から精算する方式

に分かれます。

 この定額精算方式も実費精算方式も、両方とも併せて請求するという方式は、
ないんですね。どちらかの方式にしてくださいということになります。ここがポ
イントです。

 家賃精算方式 これは、法律上の本来の方式であり、これと違った慣習とか特
約が無ければ、通常損耗は家賃に含まれているという大変わかりやすい方式なの
ですが、実務上は、わずかしか存在しません。ここが難しいところです。

次に阪神間に限って考えてみますと
 阪神間の「敷引」もしくは「解約引」という商慣習は、
定額精算という、契約時に、あらかじめ原状(現状)回復費用の金額を決めてか
ら契約を行うという慣習のことになります。

 この「敷引」もしくは「解約引」という商慣習には
入居中の通常損耗はもちろん
借家契約のお礼=礼金
空室損料を補うこと
更新料 等が含まれていると考えられています。

ですから
 「借主の無知を知っているので請求をしている」といった悪意の貸主の、
契約時と解約時に2重に原状回復費用の請求を行うという行為は、本来許されざ
る行為となる訳です。この不景気で、預かっているお金が無い貸主が増加し、
原状回復問題にかこつけて、全額返さない悪質な事例が発生し始めております。

 がしかし、公的な融資の場合は注意が必要です。
 つまり住宅金融公庫とか住宅都市整備公団の融資物件は、基本的に関東方式、
つまり「解約時の実費精算」が原則なので、注意が必要です。
 つまり阪神間に建物が建っていても、関東方式である解約時の損耗で支払額が
決まる実費精算方式の建物があるということです。
 さら平成10年の秋以降の新しい住宅金融公庫の融資物件には、第一の方式つまり
家賃精算方式ですので、契約時の定額精算もなく、なんと解約時の実費精算もな
いのです。


http://www.bon.co.jp/article/27.php
退去時に必要な原状回復、ただし通常損耗は貸し主負担


 このほど作成された東京都版“賃貸住宅トラブル防止ガイドライン”の主な内容は、次の通りです。

 まず、退去時の復旧では、(1)借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借り主の責任で生じた住宅の損耗やキズ等の原状復旧費用は借り主負担が原則、(2)経年変化や通常の使用による損耗・キズ等の復旧費用は貸し主負担が原則、(3)双方の合意で原則と異なる特約を定めることができるが、通常の原状回復義務を超えた負担を借り主に課す特約はすべて認められるわけではなく、内容によっては無効になることがある、の3点です。

 例えば、壁に貼ったポスターや絵画の跡、家具の設置によるカーペットのへこみ、日照等による畳やクロスの変色など通常損耗・経年変化は家賃に含まれるとして貸し主負担が原則です。これに対して、タバコによる畳の焼け焦げ、引っ越し作業で生じた引っ掻きキズ、借り主が結露を放置したために拡大したシミやカビなど借り主の責任で生じた汚れやキズ、故障や不具合を放置したために拡大した汚れやキズの原状回復費用負担は借り主の義務となります。注意を払って使用していれば防ぐことができた、つまり善良なる管理者の注意義務(=善管注意義務)に違反していると考えられるからです。

 ただし、次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直しなどのリフォーム、古くなった設備を最新のものに取り替えるといったグレードアップは原状回復ではありませんから、貸し主の負担です。借り主の故意・過失による負担範囲は、被損部分の補修工事に必要な施工の最少単位に限定しているからです。

 小規模修繕の特約とは、電球や蛍光灯、給水栓、排水栓の取り替えなどを貸し主の承諾なしで修繕できる権利を与えたものですが、借り主が修繕義務を負うわけではありません。したがって、この特約を理由に退去時の原状回復費用としてその費用を貸し主に請求することはできません。


東京都賃貸住宅トラブル防止ガイドライン
http://www.toshiseibi2.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-3-jyuutaku.htm
賃貸住宅トラブル防止ガイドライン〜ダウンロードページ〜
http://www.toshiseibi2.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-3-jyuutaku.htm



リンク
http://www5d.biglobe.ne.jp/~Jusl/JTLink/JTLink40.html


http://www.kansai.ne.jp/tomatohm/z_genzyou/tokuyaku.htm
慣習のたとえとしては、
阪神間では、高額の敷引(解約引)として「通常損耗分+更新料」を定額で
契約時に決めてしまい、
更新時に更新料無しで、さらに解約時に通常損耗を別途請求しないのが
慣習として成立していました。
消費者契約法が施行されるまでは・・・・
=この高額の敷引(解約引)は消費者契約法10条違反で無効になる可能性あり






賃貸住宅退去時の敷金トラブル
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/soudan/kurasi/sikikin.html



http://www.kamisama-tasukete.com/genjyoukaifuku.htm
3.国土交通省の定めるガイドライン

このような原状回復については、その範囲について以前からトラブルが多く、平成10年3月には、当時の建設省判例等を元に一定のガイドラインを示しました。
前項2で説明した内容を具体的にガイドラインとしたものです。
以下に紹介しますので、参考にされてください。
このガイドラインの冊子は、(財)不動産適正取引推進機構で入手できます。
http://www.retio.or.jp/

なお、このガイドラインは契約締結の前に考慮すべきものとされている点にはご留意下さい。既に契約が締結されている場合は、まず第一義的には契約内容を優先しなくてはなりません。
つまり、ガイドラインとは異なる契約だからといっても、直ちにその効力が無いとは言えないものなのです。ただし、この場合でも、契約の効力を争うべき余地があるものと判断できる場合もありますので、安易に妥協をしないようにしましょう。


http://tantei.web.infoseek.co.jp/ckeiyaku/news.html
・「敷引き」全額返還せよ 消費者契約法を初適用

 マンション明け渡しの際、損傷の有無にかかわらず敷金(保証金)の一部を差し引く関西地方の「敷引き」の特約は無効だとして、東京都の男性が京都市の不動産会社に30万円の返還を求めた訴訟で、大阪簡裁は17日までに、同社に全額返還を命じる判決を言い渡した。
 判決は、2001年4月施行の消費者契約法(消契法)を敷引き特約に適用。原司裁判官は「(消契法が定める)消費者の利益を一方的に害する条項に当たる」と述べ、敷引き特約を無効と判断した。
 大阪の弁護士らでつくる「敷金問題研究会」の松丸正弁護士は「敷金返還を求めた訴訟で、消契法が適用されたのは初めてだ。同種の訴訟への影響は大きい」と評価している。
 判決によると、男性は昨年10月、大阪市の賃貸マンションに入居する契約を被告会社と交わし、敷金40万円を支払った。男性は今年4月下旬、転勤のため引き払ったが、敷引き特約に基づき敷引き分の30万円を差し引かれた。(2003年10月17日:共同通信


平成15年10月16日 判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 口頭弁論終結
平成15年10月2日
少額訴訟判決

原告 甲

被告 乙 株式会社

          主文

1  被告は.原告に対し、金30万円を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は仮に執行することができる.

          事実 及び 理由

第1  請求

    主文1項と同旨

第2  事案の概要

1 請求原因の要旨

(1) 原告と被告は、平成14年10月21目、別紙物件目録記載の物件(以下「本件物件」という。)を賃貸借期間平成14年10月23日から平成24年3月31日、賃料1か月6万9000円、共益費1か月1万1025円の約定で被告が原告に賃貸するとの定期建物賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結するとともに、保証金(敷金)を40万 円とする旨を合意し、上記契約のころ、原告は、被告に対し、これを預け入れ、本件物件の引渡しを受けた。

(2) 原告は、被告に対し.事前に解約申し入れをした上、平成15年4月22日本件賃貸借契約を解約し、同日、被告に対し、本件物件を明け渡した。本件物件について、引渡を受けてから明け渡すまでの期間の賃料不払い及び原告の責めに帰すべき損傷は、いずれもない。

(3) よって、原告は、被告に対し.敷金返還請求権に基づき、既に支払いを受けた10万円を控除した残額30万円の支払いを求める。

2 争点

   敷引特約の効力

(被告の主張)
 本件賃貸借契約には、契約終了にさいし、保証金40万円から30万円を差し引いて返還するとの敷引特約がある。

(原告の主張)
 上記敷引特約は、民法その他の法律の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるから、消費者契約法10条に違反し、無効である。

第3 当裁判所の判断

1 請求原因事実及び被告の主張のとおりの敷引特約のあることについては争いがない(上記保証金が敷金であること、契約上、保証金の預託先及び返還請求先は株式会社Gとされているが、同社は実質上被告と一体と見るこ とができることについでは.被告もこれを認める。)

2 被告代表者及び証人Kの陳述によれば、本件物件の属する建物の賃貸マンション(以下「本件賃貸マンション」という。)は、主として法人の社宅向けに10年の定期賃貸借契約物件として企図されており、敷引きは、

①10年聞の継続を前提にその間の使用の対価すなわち家賃の一部前払いとし、

②場所的価値に対する対価及び仲介手数料の一部負担としての礼金として、その額が設定されていることが認められる。

ただし入居の実態とし て、2、3割は個人契約者であること、家賃は周辺物件と比較して特に低く抑えられているものではなく、平均 水準であることについては争いがない。

3 一般に、敷金ないし保証金は、貸賃借契約にさいし、賃料その他の債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に交付される金銭であって、契約終了のさいに、債務不履行がなければ、全額賃借人に返還されるべきものと解されている。関西地方においては、敷金返還のさいにその一部を控除することをあらかじめ賃貸人と賃借人との間で合意する敷引きの慣習のあることは、当裁判所に顕著な事実であるが、敷引きには種々の性質のものがあるから、その合意の内容が明確で、合理性があり、賃借人に一方的に不利益なものでない限り、その合意は尊重されるべきであって、一般的に、敷引特約が直ちに公序良俗に違反し、あるいは信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるとはいえない。本件賃貸マンションについてこれを検討すれば、法人社宅向けの10年の定期賃貸借契約物件であること、立地条件が優れていることから、前記2①②の趣旨の敷引きにはそれなりの合理牲があり、通常の場合には契約当事者がその趣旨を十分理解して合意をなす以上、その敷引割合の多いことのみをもって無効とすべきではない。しかし、契約書(甲5)及び重要事項説明書(乙1)には、敷引金額が記載され ているだけで、その趣旨や内容は明示されておらず、契約締結にさいし、口頭でその説明があったことも伺われ ない。
さらに、原告は個人として契約したものであり、途中解約は転勤というやむを得ない事情によるものであ ること、入居期間は約6か月に過ぎず、原告の責めに帰すべき本件物件の損傷はなく、自然損耗もほとんど考えられないことなど本件特有の事情が認められ、途中解約によって害される被告の将来の家賃収入に対する期待 は、次の入居者を見つける事とで容易に回復可能であることを考慮すれば、本件の場合、前記2①②の趣旨で設定された敷引締結を個人契約者である原告にそのまま適用し、保証金の75パーセントもの敷引きを行うことば、 当事者問の信義衝平に照らし、相当ではない。
 したがって、個人契約者(消費者)に対しても入居期間の長短にか かわらず一律に保証金40万円のうち30万円を差し引くこととなる前記敷引特約は、この限度で、民法及び借地借家法等の関連法規(判例、学説などにより一般的に承認された解釈を含む。)の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるといえるから、 消費者契約法10粂により無効である。

4 なお、証拠(乙1・2)によれば.原告は、本件賃貸借契約を媒介した株式会社○○○○の執行役員であり、 一般消費者とは異なり不動産取引に精通していることが認められるが、原告が、形式的にも実質的にも個人とし て本件賃貸借契約を締持したことには当事者問に争いがなく、消費者契約法上の消費者であるかどうかは、個別的な知誰経験を捨象して定型的に判断されるべきであるから、原告を消費者と認めることができる。

5 以上によれば、原告の請求には理由がある。

大阪簡易裁判所




http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200406.html
賃貸借契約における原状回復特約の消費者契約法による無効

 本件は、自然損耗および通常の使用による損耗についての原状回復を賃借人の負担とする特約を含む賃貸借契約が、消費者契約法施行後に更新された場合について、その特約が消費者契約法10条により無効とされ、敷金の全額返還が認められた事例である。(京都地方裁判所平成16年3月16日判決 一部認容 最高裁ホームページ掲載)

                                                                                                                                                              • -

事件の概要
X:原告(賃借人、個人)
Y:被告(賃貸人、個人)
1 Xは、平成10年7月にYから共同住宅の一室を賃借して入居をした際に、敷金として20万円をYに預託した。この賃貸借契約においては、期間が同月1日から翌年6月までとされ、また月額賃料は、5万5000円とされた他、退去時の原状回復について、次のような特約がなされた。すなわち自然損耗および通常の使用による損耗についてXが原状回復義務を負担し、また敷金は、建物明け渡し時にXが賃貸借契約に関しYに対し負担する債務を控除した残額を建物明け渡し後45日以内に返還する、というものである。なお、当事者に争いがないところから、Yは、事業者であると目される。
2 この賃貸借契約は1年ごとに合意により更新された。直近の更新としては、消費者契約法が施行された平成13年4月1日のあとである同年7月7日に更新の合意がなされている。そののち賃貸借契約は翌14年6月9日に終了し、同日にXはYに建物を明け渡した。しかしYが、建物の原状回復費用として20万円を要したとして敷金全額の返還を拒否したところから、XがYに対し、敷金20万円全額の返還を求めて提起したのが、本件訴訟である。
 この事件においてYは、上記の原状回復特約に基づく原状回復費用を控除すると返還すべき敷金はないことなどを主張したが、裁判所は、この原状回復特約は消費者契約法10条に基づき無効であるとし、Yに対し敷金全額の返還を命じた。
理由
1 消費者契約法の適用の有無
 消費者契約法の施行後である平成13年7月7日に締結された本件契約合意によって、同月1日をもって改めて本件建物の賃貸借契約が成立したから、更新後の賃貸借契約には消費者契約法の適用がある。したがって、従前の契約どおりとされ、更新後の賃貸借契約の内容になっている本件原状回復特約にも同法の適用がある。
 実質的に考えても、契約の更新がされるのは賃貸借契約のような継続的契約であるが、契約が同法施行前に締結されている限り、更新により同法施行後にいくら契約関係が存続しても同法の適用がないとすることは、同法の適用を受けることになる事業者の不利益を考慮しても、同法の制定経緯および同法1条の規定する目的にかんがみて不合理である。
2 本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効か否か
 賃借人が、賃貸借契約の締結に当たって、明け渡し時に負担しなければならない自然損耗等による原状回復費用を予想することは困難であり (したがって、本件のように賃料には原状回復費用は含まれないと定められていても、そうでない場合に比べて賃料がどの程度安いのか判断することは困難である)、この点において、賃借人は、賃貸借契約締結の意思決定に当たっての十分な情報を有していないといえる。本件のような集合住宅の賃貸借において、入居申込者は、賃貸人または管理会社の作成した賃貸借契約書の契約条項の変更を求めるような交渉力は有していないから、賃貸人の提示する契約条件をすべて承諾して契約を締結するか、あるいは契約しないかのどちらかの選択しかできないことは明らかである。
 これに対し、賃貸人は将来の自然損耗等による原状回復費用を予想することは可能であるから、これを賃料に含めて賃料額を決定し、あるいは賃貸借契約締結時に賃貸期間に応じて定額の原状回復費用を定め、その負担を契約条件とすることは可能であり、また、このような方法をとることによって、賃借人は、原状回複費用の高い安いを賃貸借契約締結の判断材料とすることができる。
 以上の点を総合考慮すれば、自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させることは、契約締結に当たっての情報力および交渉力に劣る賃借人の利益を一方的に害するものといえる。ゆえに本件原状回復特約は消費者契約法10条により無効であると解するのが相当である。
解説
1 敷金は、賃借人の債務を担保するため賃借人が賃貸人に預託する金銭である。賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の債務としては、例えば賃料債務や、賃借人の落ち度による賃借物件の汚損などに伴う損害を賠償する債務が考えられる。これらの債務が退去時に残っていれば、債務額を控除した金額が賃借人に返される(債務額が敷金の額を超える場合には、敷金は返ってこないし、賃借人は、不足額を払わなければならない)。これに対し、賃借人の債務が何ら残っていない場合には、賃貸人は、敷金の全額を返還しなければならない。
2 一般に賃借物件の修繕は、賃借人の落ち度による汚損・破損の場合を除いては、賃貸人の義務であり、その費用も賃貸人が負担する。民法606条で定められている原則であり、これと異なる趣旨の特約を裁判所がそのまま有効と認めることもある。なぜなら賃借人の通常の使用に伴う損耗は、賃料に含まれていると考えられるからである。なお、どこまでが通常使用損耗であるかも、しばしば争われるが、それを超える損耗であることは、賃貸人の側が主張・立証するべきである(加藤新太郎「実践的要件事実論の基礎/敷金返還請求訴訟における要件事実」 『月刊司法書士』374号参照)。
3 具体的に考えられる場面としては、(1)特約が不動文字(注)で前もって印刷されていて賃借人に十分に説明されないまま契約書に入れられたものであるから無効であると考えられる場合(例文解釈)、(2)修繕を賃借人負担とする特約があるが、そこにいう修繕とは通常損耗を超えた汚損などに限られると考えられる場合(信義則に基づく特約文言の制限解釈、民法1条2項)、(3)修繕を賃借人負担とする特約が著しく不公正なものであるため無効であると考えるべき場合(公序良俗違反、民法90条)および(4)消費者の義務を加重してその利益を一方的に害するものとして無効であると考えられる場合(消費者契約法10条)などがある。
 この事件の賃貸借契約は、最初の成立が消費者契約法施行前であったが、更新の合意が施行以後であったことから、(4)に当たるものとして扱われた。敷金トラブルの解決に画期的な判決であるが、一般にはこの事件とは異なり、賃貸人が事業者であると一概にいうことができない場合もあり得ることから、(3)などにより解決すべき場面が残されている。
■参考判例
 特約の解釈として原状回復の義務付けられた損害に自然損耗等が含まれないとされた事例として、川口簡易裁判所平成9年2月18日判決(消費者法ニュース32号80ページ)、大阪高等裁判所平成12年8月22日判決(判例タイムズ1067号209ページ)他多数。特優賃法および住宅金融公庫法の適用事例であるが、特約が公序良俗に反し無効とされた近時の事例として、大阪地方裁判所平成15年6月30日判決(判例集末登載)。
 本件とは異なり特約が有効であるとされた事例として、東京地方裁判所平成12年12月18日判決(判例時報1758号66ページ)。市営住宅についてであるが、通常の住宅使用による自然減価分が毎月の家賃に含まれているとはいえないと判示した事例として、名古屋簡易裁判所平成16年1月30日判決(最高裁ホームページ掲載)。
 なお、近時の判例の動向については、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(改訂版)』(国土交通省住宅局・(財)不動産適正取引推進機構編(’04年2月発行))48ページ以下が詳しい。

注 不動文字 : 契約書等において、あらかじめ印刷された定型的な共通文言のこと







修繕費を請求されたら

 敷金はそもそも、賃貸借契約の終了時に家賃の滞納や、建物を傷付けたり壊したりしたのに賠償しないまま退去した場合の修復費を担保する目的で、家主に預けるものですから、正当な理由がなければ全額を返還されるべきものです。
 修繕費を敷金から差引かれたり追加請求されたら、その内訳を明確にしてもらい、不審な部分については説明を求め、敷金を返してほしい旨と支払えない理由を示して、家主と納得のいくまで交渉することが大切です。
 家主との話し合いがつかない場合は、簡易裁判に敷金返還の調停申立をするか、あるいは少額訴訟を提起する方法もあります。


トラブルを防ぐには

 敷金を預けて精算後に返金してもらうという当事者間の関係では、どうしても入居者が弱い立場におかれています。入居の際には契約書をよく読み、退去時に入居者が負担すべき修復の範囲や敷金の返還条件を確認することが大切です。特に最近は契約書面上に具体的な修復範囲を明記するものも増えてきています。その内容がたとえ「原状回復」を越えるものであっても現行法上は有効な契約とされ、契約者は拘束されますので、注意が必要です。(また,平成13年4月に施行された消費者契約法では,消費者の利益を一方的に害する条項は無効とすると定められており,このような特約はそもそも無効であるとの解釈も出来ます。)
 契約内容に納得できても後にトラブルが発生した時のために、できれば家主に立会いを求め室内外をよく確かめるか、それが無理なら室内の写真を撮っておくなど、入居時の状態がどうであったかを記録しておくぐらいの慎重さが必要です。


民法第五百四十五条
  当事者ノ一方カ其解除権ヲ行使シタルトキハ各当事者ハ其相手方ヲ原状ニ復セシムル義務ヲ負フ但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス
 2前項ノ場合ニ於テ返還スヘキ金銭ニハ其受領ノ時ヨリ利息ヲ附スルコトヲ要ス
 3解除権ノ行使ハ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス


http://www1.odn.ne.jp/caq44780/sikikinn.htm
原状回復について
 上記のとおり借主には賃貸契約の解約時には、賃貸物件を修繕しないといけない義務があるのですが(原状回復義務)、ここで注意しなければならないのは、一般的には賃借物件の通常使用により時間の経過に伴って生じる自然損耗分は賃料として回収されれていると考えられ、全く入居当初のような状態にして貸主に返還するといものとは考えられていないということです。もっとも、借主が故意過失によって棄損した箇所などは借主の負担で回復しなければなりません。

判例要旨
1賃貸物件の賃貸中の自然の劣化・損耗はその賃料によってカバーされるべきである(伏見簡裁h7・7.18)

2自己の意思に基づいて契約を締結した以上は、特約条項(ハウスクリーニング費用等を借主が負担する条項)は有効であり自然損耗分も含め賃借人の負担とする(平成12.12.18東京地裁

 上記に掲げたものは判例の要旨の一部分の抜粋です。ここで注意しないといけないのは、裁判で争われた結果の一部分の抜き出しに過ぎず、その事例の背景、賃貸借期間、賃料、敷金等の金額、物件損耗の程度、契約時の重要事項説明の程度、証拠の多寡によって具体的な事案については、上記の判例と結果が異なることになる可能性があるという点です。あくまでもこういう考え方ができるという前提で、絶対こうなるというものではありません。 
 ただ、一般的には上記1の判例のように、考えられています。
敷引きついて

 関西でも阪神間では賃貸契約時、敷金を交付するとともに敷引きの金額が定められるのが一般的です。
 この敷引きの金額には、礼金、原状回復費、更新料その他、複合的な要素が含まれていると考えられ、延滞賃料がなく、通常使用の範囲内の汚損であれば、解約時には、敷金−敷引=返金額となります。
  また、敷引条項がある場合は契約の更新時に更新料(礼金)を要求されないのが一般的です。


住宅金融公庫融資物件について
 住宅金融公庫融資から融資を受けて建設された賃貸住宅はどこの地方であっても敷金等については、融資の期間中はある程度の規制を受けることになります。
 住宅金融公庫法施行規則第10条及び「賃貸経営のための道しるべ」(ガイドラインと呼ばれています)で規定されており、要約すると下記のとおりです

○敷金は、家賃の3か月分(レントハウスローン、中高層ビル融資の場合は6か月分)以内とすること

礼金、権利金、謝金、更新料などの金品を受領しないこと

○退去時に敷金返還に際してあらかじめ敷引きの取り決めをしないこと

○短期に退去した場合は敷金の全額を返金しない等という取り決めがないこと

○不動産仲介業者などへの更新事務手数料を一方的に借主に負担させないこと

○借主の退去時の原状回復義務の範囲に、通常の使用に伴う損耗分を除いていること

○借主に対して修繕の一切を義務づけないこと

○借主の家財保険への加入を義務付けないこと

○借主に対し物品などの貸与を強制付けないこと

○借主からの解約申し入れ期間期限を1か月とすること

○その他賃借にとって不当な負担と思われるようなことを賃貸に条件としないこと

原状回復にかかるガイドラインについて
 平成10年当時、建設省から委託を受けた(財)不動産適正取引推進機構
が取りまとめさ作成された「原状回復にかかるガイドライン」といったものがあります
また、これに先立って平成5年に同省が住宅審議会の答申を受けて作成した「賃貸住宅標準契約書」といものものあり、どちらも法的な強制力はありませんが、敷金や、原状回復に対する国の考え方等が指し示されています。
 
 原状回復考え方としては
1、建物、設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)
2、賃借人の通常使用により生ずる損耗等(通常損耗)
3、賃借人の故意過失、善管注意義務違反、その他通常使用を超えるような使用による損耗等
と賃貸物件の劣化要因を3っつに分けて、賃借人の負う原状回復義務は3の損耗の復旧のみであると定義しています。

参考図書「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン〜敷金返還と原状回復義務〜」大成出版社(大きい書店ではほとんど置いています)

 いずれにしても、入居の際に契約条項を確認しましょう。「敷金・礼金一切不要」等と宣伝されて、安易に契約してしまうと、入居時の費用は安く済んでも、結果的には解約時の費用負担が予想外に高いことなども考えられます。
 解約時にはもう一度契約条項を確認し、敷金・保証金が戻ってくるはずなのに、返してもらえない時は、訴訟(少額訴訟)、調停等の手段を講じることも1つの道かと考えられます。その際は当サイトの各ページをご参考に!