自己株式の買い受けの方法について

http://j-net21.jasmec.go.jp/news/law/column/040205.html
<企業法アベニュー>取締役会による自己株式の取得等
2004.02.05 弁護士 松村昌人

 平成15年7月30日、「商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律」(平成15年法律第132号。以下、改正法。)が公布されました。改正法の内容は、(1)取締役会決議による自己株式の取得の拡充、(2)中間配当限度額の計算方法の見直し等となっています。改正法は、平成15年9月25日から施行されます(改正法附則第1条、平成15年政令第417号)。

第1 取締役会決議による自己株式の取得
 改正法による新商法(以下、新商法)では、取締役会決議による自己株式の取得が大幅に認められました。すなわち、商法210条は、「会社ガ自己ノ株式ヲ買受クルニハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外定時総会ノ決議アルコトヲ要ス」と定めており、基本的に、定時総会において、決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までに買受け可能な株式取得枠を設定し、その枠内で買受をおこなうという構造にありました。このため、株式取得枠に余裕がない場合には、機動的な自己株式取得需要には対応できないという問題がありました。そこで、新商法211条の3第1項に、以下のとおり、第2号を新設し、取締役会決議による自己株式の取得を一般的に肯定することとしました(改正法第1条)。

(新商法211条の3第1項)
 会社ハ左ニ掲グル場合ニハ取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クルコトヲ得
1 其ノ子会社ノ有スル自己ノ株式ヲ買受クルトキ
2 取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テ第210条第9項本文ニ規定スル方法ニ依リ自己ノ株式ヲ買受クルトキ

 新商法によれば、取締役会に自己株式買受の授権をおこなう旨の定款変更をすることで、会社は、取締役会決議のみで、自己株式を取得することができるようになります(新商法211条の3第1項第2号)。但し、自己株式取得の方法は、市場取引又は公開買付け(証券取引法第2章の2第2節)となります(新商法211条の3第1項第2号、商法210条第9項本文)。すなわち、定時総会決議による取得の場合には可能な「特定ノ者ヨリ買受クル」方法(商法210条2項2号)は、取締役会決議による取得の場合には、予定されていません。また、自己株式買受をした場合には、買受を必要とした理由、買受株式の種類・数・取得価額の総額について、後日の定時総会において報告をする必要があります(新商法211条の3第4項)。なお、取得価額の総額の上限は、中間配当限度額から中間配当額を控除した残額となります(新商法211条の3第3項)。