電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子契約法)
http://www.netlaw.co.jp/kaisei/it02.html

 平成13年12月25日から「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子契約法)」が施行されています(成立は、平成13年6月22日)。この法律は、①電子消費者契約における錯誤無効の特例と、②電子商取引契約のおける契約の成立時期の特例を定めることを目的としています。  

 1 電子消費者契約における錯誤無効の特例    
  インターネット等の電子的方法を用いた取引において、画面上の操作ミス、入力ミスによって、当事者が意図しない申込や承諾をしてしまった場合の契約の効力には問題があります。これについて民法95条は、「意思表示は法律行為の要素に錯誤ありたるときは無効とする。」と規定していますが、その但書においては、「表意者に重大な過失ありたるときは表意者はその無効を主張することを得ず。」と規定しています。したがって、当事者の意図しない意思表示が操作ミス、入力ミスに基づく場合は、「表意者に重大な過失がある。」として、錯誤の主張ができなくなる可能性が大きいといわざるをえません。  
  この結果は、B−Cの取引においては妥当とはいえませんので、消費者保護の趣旨で、消費者と事業者間の契約においては、事業者が操作ミス、入力ミスを防止するための措置を講じていない限り、但書の主張を行えない、すなわち重過失の主張を行えないこととするのが妥当であると考えられます。  
  そのため、上記法律は、電子消費者契約に関しては、事業者が操作ミス、入力ミスを防止するための措置を講じていない場合には、たとえ消費者に重過失があったとしても、操作ミス、入力ミスにより行った意図しない契約を無効にするすることができるよう民法の特例を定めようとするものです。  
  したがって、この法律は、電子的な方法で締結された契約のうち、①相手方が消費者である場合(B to C)で、②電子的方法を用いて送信される消費者の申込みまたは承諾の意思表示が、③事業者サイドが設定した画面の手続にしたがって行われる契約が対象となります。そして、この場合、事業者サイドが送信される内容を確認する措置を講じていないと、原則として操作ミスなどの錯誤に基づく契約は無効とされることになるのです。

 2 電子商取引契約のおける契約の成立時期の特例
  また、民法は、隔地者間契約の成立時期については、郵便という時間のかかる手段を前提としているため、迅速な契約の成立を図るという観点から、契約の申込みを受けた者が承諾の通知を発した時点であるとしています。
   (発信主義;民法第526条1項 隔地者間の契約は承諾の通知を発したる時に成立す。)  
  ところで、インターネット等の電子的方法を用いて承諾の通知を発する場合は、瞬時に意思表示が到達するため、迅速な契約の成立を図るという目的で発信主義を採用することにことさら意義を見出せませんし、そもそも発信主義によれば承諾の通知が未到達の場合のリスクを承諾の通知を受ける側(申込者)が負担することになります。これを、一般の電子消費者契約について見ますと、バーチャル・ショップやバーチャル・モールは、消費者に対して「申込」の誘因を行っており、この誘因に対して消費者が「申込」をすることになります。この「申込」があった場合に、事業者がこれを「承諾」する場合は、承諾の意思表示を発信しさえすれば、何らかの事故によりその意思表示が消費者に到達しない場合(この場合、消費者は契約が成立しなかったと考える)でも、契約が成立したと扱われ、意思表示未到達のリスクを消費者が負うことになります。  
  しかし、この結果は妥当なものとは思われませんし、また取引の迅速化を図るという発信主義の採用理由は、電子的方法で意思表示を行う場合はその合理性を支える理由にはなりませんので、これを改めるべきです。   
  そこで、上記法律は、インターネット等の電子的方法を用いて承諾の通知を発する場合には、瞬時に意思表示が到達するため、その契約成立時期を、承諾の通知が到達した時点に変更することとする民法の特例を定めようというものです。尚、本法律は、インターネット等の電子的方法を用いて承諾の通知を発する場合全般について到達主義を採用することが合理的であるという理由で、その適用範囲を電子消費者契約に限定していません。   

  経済産業省が公表している資料   
      法律案の概要(PDF形式)   
      説明資料(PDF形式)    
      逐条解説(PDF形式)    
      政令概要
      政令(PDF形式)