http://www.dab.hi-ho.ne.jp/hirano-j/coop_teisyaku.htm
から引用
●1991年(平成3年)10月4日に公布され、1992年(平成4年)8月1日に施行された新借地借家法は、土地・建物の貸主と借主の関係を公平かつ合理的にしよう定められた法律です。借地については新たに「定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用借地権」という制度が創設され、借家について「期限付建物賃貸借制度」が新設されました。どちらも、一定の期間が経過すれば契約は更新されずに終了します。よって貸主側の返還や高額の立退き料に対する不安を解消できるとともに、権利金などの契約締結時に支払われる金額を抑える作用が期待されます。

● 新法の施行に伴い旧借地法・借家法・建物保護法は廃止されましたが、新法施行前に締結された契約については、従前の法律がまだ効力を有しています。



http://www.bmi.or.jp/seminar/3169rec.html
から引用
期限付建物賃貸借とは何か
 借家権を発生させない方法について解説しよう。まず、期限付建物賃貸借を説明する。一般の2〜3年契約は期間が満了になっても更新することを原則としている。一方、期限付建物賃貸借は、特別な理由がある場合には、更新をすることなく権利が終了するという制度である。この期限付建物賃貸借は平成4年の借地借家法によって全く新しく認められた制度である。これは、貸主が生活の本拠として使っている自宅を転勤やその他の理由によって使用できなくなる期間中だけ貸すというものである。期限付建物賃貸借契約であれば更新はできない。

 しかし、「生活の本拠」ということは貸主が自ら住んでいる家ということになる。事業用のビルというのは人に貸すためのビルである。従って、ビル賃貸借においては期限付建物賃貸借の契約はできないということになる。そのため、事業目的のビル賃貸借に期限付建物賃貸借を適用する余地は全くない。

 取り壊しを予定している建物の賃貸借にも期限付建物賃貸借ができる。これは法令、または契約によって一定期間経過後に取り壊すことが明らかな場合、取り壊すまでの間だけ貸すという性質のものである。取り壊しの時期が来れば、賃借人の権利は終了する。

 このケースであれば、居住目的でもないので、事業目的の建物でも使えそうな感じがする。ただし、注意しなければならないことがある。取り壊すことが明らかな原因として、法令または契約によって取り壊すことが明らかになっている必要がある。例えば、都市計画や区画整理などの法的根拠に基づいて立ち退かなくてはならないということが決められている場所には適用される。また、更地にして地主に戻すということが、法律上義務づけられている定期借地権が設定されている土地でも、借地人はいずれその建物を取り壊し、更地にしなければならない。この場合は建物を取り壊すことが契約上の義務である。このように契約上、建物を取り壊すということが明確な場合、その間、期限付建物の賃貸借ができる。

 ところが、貸主の取り壊し計画というのは、単なる個人的な計画にしかすぎない。これは法令や契約によって取り壊す義務があるという種類のものとは考えられないのである。単純に貸主側に建て替えの計画があるというだけでは、期限を定めた契約をすることはできない。一般の賃貸借契約と何ら変わりがないのである。

 取り壊し予定というのは家主の都合ではない。家主の計画だけでは不十分なのである。「第三者との契約によって法的な義務として取り壊しをしなければならない場合」という具合にかなり限定されているのである。このことを知らないで、取り壊し予定があるからそれまで期限付きで貸したつもりが、実際には借家権が存在し、酷い目にあうということがある。

 このように考えると借地借家法によって期限付建物賃貸借という制度は確かにあるが、実務面ではそれほど活用できないということが分かる。

3一時使用賃貸借とは何か
 一時的・臨時的な使用の場合、借家権は発生しない。元来、一時的に建物を賃貸借しているためにその期間が終了と同時に権利も終了し、更新や正当事由を必要としない。

 この一時使用賃貸借の適用にも難点がある。それは、一時的・臨時的であるということを何によって証明するかということである。当事者の合意によって、特約事項にすれば良いというのであればトラブルにはならない。

 一時使用賃貸借という契約に確かになってはいるが、借主としては「それは家主の都合で勝手に明記したにしかすぎない。自分の使用は客観的に見ても一時使用ではない。」として立退問題が起きるケースが多いのである。実際に裁判をしてみると裁判所の判断はなかなか厳しい。一時使用賃貸借の特約があったとしても客観的に見て一時的・臨時的と認められないため、法的な一時使用として認められないということが多い。そのため、通常の借家権が発生することになる。

 一時使用貸借をめぐるトラブルを未然に防ぐためには、貸主の建物に対する使用計画が確定している必要がある。また、借主が何故一時的にその物件を借りるのかという事情をできるだけ具体的に書面化しておく。なるべく、具体的に細かく書けるだけ書いた方が良い。

 「一時使用」の期間は法律では明確にされていない。判例ではせいぜい1年以内の期間である。2〜3年貸しては、なかなか一時使用とは認めてもらえないのが実状である。このように一時使用賃貸借では普通の借家権を発生させない利点があるが、案外この一時使用賃貸借を活用できる場面は少ない。

 現在の借地借家法で借家権が発生しないケースは期限付建物賃貸借か一時使用賃貸借しか考えられない。しかし、前述したように、これらのものは貸主が実務上有効に活用できるというものではない。