2004/11/24
不動産登記法改正のあらまし[民事一般]
不動産登記法改正(平成17年3月7日施行)のポイント
今まで登記所に持参しなければならなかった登記の申請が,郵送・宅急便などでもでき,一部の登記所から不動産登記の申請がオンラインで申請できるようになります。その他の改正のポイントは次の3点です。
(1)登記原因証明情報を提供する。
現在,売買などの所有権移転,担保設定,そして担保抹消などの登記を申請するにあたり,登記の原因となる契約や事実を証明する書類は,登記上の要件を満たす契約書などがあれば添付することになっています。また,抵当権の債務者に住所移転や相続があった場合には,その事実を証明する書類は添付しないことになっています。
新法においては,登記申請にあたり登記の原因となった契約や事実を証明する書類(「登記原因証明情報」という)を,原則として提供しなければならなくなります。たとえば,売買による所有権移転登記にあっては売買契約書や領収書の原本の提供,抵当権設定登記では,金銭消費貸借契約書と抵当権設定契約書の原本の提供が,必要的となります。また,債務者の住所移転では住所の移転経過の記載のある住民票,債務者の相続では戸籍や遺産分割協議書などの相続書類が要求されることになります。
(2)「保証書制度」が廃止される。
 現在は,「権利証」がない場合,所有権移転登記以外であれば,「保証書」があれば「権利証」があるのと同様にそのまま登記が完了します。また「保証書」による所有権移転登記では,最初に登記が仮受付されるとともに登記所から登記簿上の所有者に対して「保証ハガキ」が発送されます。そのハガキを受け取った登記簿上の所有者は,その登記申請に間違いないとして「保証ハガキ」を登記所に提出したときに本登記され登記が完了します。
この現在の「保証書の制度」が廃止され,平成17年3月7日から「権利証」(又は「登記識別情報」後記参照)がない場合には,新しい「事前通知制度」または「資格者代理人による本人確認情報の提供」・「公証人による本人確認」のいずれかの手続により登記をすることになります(「公証人による本人確認」は省略)。
ア 事前通知制度
 「事前通知制度」は,「権利証」(又は「登記識別情報」)がないまま登記申請(申請書には「権利証」(又は「登記識別情報」)がない理由を記載する)をすると,登記所から登記簿上の所有者に対して,その登記申請に間違いないかどうかの通知が行われ,間違いなければ本人がその通知書に署名し実印を押印したうえで登記所に提出し,登記が完了します。
 この登記所からの通知は「本人限定受取郵便」(なお,法人の場合は,「書留郵便」)で行われます。「本人限定受取郵便」は,「書留郵便」と異なり本人以外の人は家族であっても受け取ることができません。郵便局に出向くことがなかなかできないなど通知書の受取に時間がかかってしまい登記完了に日時を要し通知の提出期限を経過したり,あるいは本人が通知書を受け取れず通知書が登記所に戻され登記ができない場合があり得ます。
イ 資格者代理人による本人確認情報の提供
 今までの「保証書」と同じように,権利証があるのと同様にそのまま担保設定の登記ができる方法もあります。この方法が『資格者代理人による本人確認情報の提供』というものです。この方法は,その登記申請をする司法書士などの資格者代理人が,不動産登記法に基づく法務省令で定められた免許証やパスポートなどの本人確認書類をもとに本人を確認し,その本人確認をした書類を登記申請の書類とともに登記所に提供した場合には,今までの「保証書」と同じように権利証があるのと同様にそのまま登記が行われます。ただし,司法書士などの資格代理人が本人確認した書類に不備があり本人確認が足りないと登記官が判断した場合には,上記アに記載した「事前通知」の方法によることになり,登記所から本人に対する通知により登記が行われることになります。

(3)『権利証』がなくなる。
登記所が「オンライン申請できる登記所に指定された時」以降に申請があった登記について,『権利証』と呼ばれていたものがなくなります。『権利証』は,『登記識別情報』という12桁の英数字などを組合せた「情報」(例:174A23CBAX53)にかわります。
 今まで,登記所が「登記の受付年月日と受付番号」を付して交付した『権利証』,不動産の所有者であれば「登記済権利証」,金融機関などであれば「登記済設定契約書」などと呼ばれていたものは作成・交付されなくなるのです。なお,それまでにできた『権利証』はそのまま『権利証』として使用することができますし,『登記識別情報』と交換するという手続はありません。
このオンライン申請できる登記所は,当初は「さいたま地方法務局上尾出張所」指定(平成17年3月7日から3月末日までに指定される予定)され,この登記所から『権利証』がなくなります。平成18年3月までに約100の登記所がオンライン庁に指定され,5〜6年以内には,大半の登記所は「オンライン申請できる登記所」になる見込みです。