商業関係・先例
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先例商業登記Q&A
株式会社関係 有限会社関係

株式会社関係

Q01(設立発起人が株式会社の場合)
株式会社を新たに設立する場合に発起人が株式会社の場合、一般のケースと比較して気を付ける点はありますか。

A01
定款の認証を受けるときに、株式会社が他の株式会社の発起人となっている場合の定款の認証は、他の株式会社の発起人となることがその株式会社の目的の範囲内にあることを公証人が確認した上認証をすることとされています。実務上は、少なくとも出資する株式会社の目的と、新設会社の目的とが少なくとも一つ以上同一のものがあるか、発起人である株式会社の登記簿謄本を公証人に提出して判断を受けることになります。(昭35.6.9民甲第1422号回答 参照)
登記は、会社が発起人となっている株式会社の設立登記の申請がなされた場合、添付書類により会社が他の会社の発起人となることが明らかに発起人たる会社の目的の範囲外の行為と認められない限り受理されます。この場合、すでに公証人によって確認されていますから、発起人の株式会社の登記簿謄本は登記の添付書類ではありません。また、有限会社についても同じです。(昭56.4.15民四第3087号回答 参照)

Q02(発起人、株式申込人が代表取締役が同一の株式会社の場合)
発起人、株式申込人が株式会社で新設する株式会社と代表取締役が同一人のときはどうですか。

A02
株式の申込の実質は金銭の貸付行為と同一視されるため、商法第265条の利益相反行為なので、出資する株式会社の取締役会の承認を要し、取締役会議事録を作成することが必要ですが、定款の認証や登記の申請のときには、その取締役会議事録の添付は不要です。(月刊登記先例解説集第304号 参照)
登記官は、株式の申込みや引受けについて実質的な有効性をチェックすることまでは要求されず、また登記の添付書面として他の会社の取締役会議事録は含まれていないと解されるからです。(昭61.9.10民四第6912号回答 参照)
新設する株式会社の方は取締役会の承認は不要です。設立後の新株発行についても募集行為をする株式会社の方は利益相反行為を考慮する必要はありません。株式申込をする株式会社の方は取締役会の承認を要するが、同様に登記申請時の添付書類ではありません。
発起人が株式会社でその代表取締役が個人的にも発起人、株式申込人となったとき、発起人が株式会社でその平取締役が個人的に発起人、株式申込人となったとき、出資する株式会社の取締役会の承認を要するが、登記申請時の添付書類ではありません。

Q03(役員の氏名変更と重任登記)
役員の重任登記の場合、氏名や住所に変更などがあったときは、必ずその旨の登記を経由してからでないといけないのですか。

A03
株式会社の役員が重任した場合、登記している氏名が新たに登記すべき氏名と相違しているときは、議事録その他の書類により同一人であることが明らかでも氏名の変更または更正の登記をしないまま重任の登記をすることはできません。(登記研究第390号 参照)
例外として、上記のケースで、登記用紙と同一の用紙に登記すべき事項を記載する場合(全員変更の場合)は、直接改名後の氏名で重任の登記ができます。(登記研究第409号 参照)
株式会社の代表取締役が重任する場合、その住所が登記簿の記載と相違していても、その重任の登記は受理してさしつかえないとされています。
この場合、変更証明書の添付を要しません。(登記研究第329号 参照)

Q04(発起設立と原始定款の変更)
株式会社の発起設立において原始定款を変更する場合について説明してください。

A04
公証人の認証を必要とするので、変更事項を明らかにした書面に発起人が署名し、印鑑証明書を添付しその書面について認証を受け直すことになります。この場合、登記の添付書類としての定款は変更前の認証定款に上記の書面を合綴したものとなります。

Q05(設立時の取締役及び監査役の調査書の署名者)
取締役・監査役の調査(報告)書は全員が署名する必要がありますか。また、選任方法により記載の仕方が違いますか。

A05
必ず取締役・監査役の全員が記名(署名)押印をすることとされています。
選任方法による文言例

 ①「平成  年  月  日株式会社○○○○の創立総会において取締役及び監査役に選任されたので」
 ②「平成  年  月  日発起人より取締役及び監査役に選任されたので」
 ③「平成  年  月  日作成の定款において取締役及び監査役に定められたので」

Q06(ローマジ字その他の商号を用いた登記)
商号にローマ字やアラビア数字を使用すたいのですが。

A06
平成14年11月1日以後商業登記規則などの改正により商号の登記について、ローマ字その他の符号を用いることができるようになりました。

東日本ABC株式会社」、「XYZ京都株式会社」、「株式会社777」、「株式会社SUZUKI」「MEC株式会社」

ローマ字その他の符号使える記号
(ア)  ローマ字(大文字及び小文字)
(イ)  アラビヤ数字
(ウ)   「&」(アンパサンド)
「’」 (アポストロフィー)
「,」  (コンマ)
「−」 (ハイフン)
「.」 (ピリオド)
「・」 (中点)
次のように定款には、記載してください。ただし、登記商号は、「MECCo.Ltd.」とかではなく、MEC株式会社」となります。会社の種類により株式会社、有限会社などの文字を用いなければなりません(商法17条)。ふりがななどは使えません。(例「MBC(エム・イー・シー)株式会社」は不可です。
定款記載例
 第1条 当会社は、MEC株式会社と称する。
  第1条 当会社は、21世紀株式会社と称する。

Q07(最初の取締役と設立後就任した取締役の任期)
株式会社の設立後、就任した取締役の任期と、最初の取締役の任期について知りたいのですが。

A07
最初の取締役については、定款の定めで、就任後1年以内の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時までとするとなっているのがほとんどですので、その場合は定時総会で任期満了退任することになります。もし、この定めがなければ、最初の取締役の任期は商法第256条第2項によることになります。設立登記の日から初日不参入で、計算しますから、平成7年9月5日登記となっていれば、6日から起算して平成8年9月5日に退任します。次に、会社設立後、決算期の前に就任した取締役については、定款に補欠または増員により選任された取締役は前任者または他の在任取締役の任期の在任期間とする旨の記載があれば、最初の取締役と同様に任期満了退任となりますので、同一の株主総会で、全員の選任決議ができます。この定めがなく、取締役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとするとなっているだけの場合は、退任時期が1年異なりますので注意する必要があります。もちろん、設立直後、全員辞任して、新たに就任登記した場合も通常の任期となります。

Q08(定款で最初の役員を選任することの可否)
株式会社の発起設立の場合、定款で取締役、代表取締役及び監査役を定めてもかまいませんか。

A08
定款で最初の代表取締役を定めることはできません。また、株主総会などでも選任決議は認められていません。商法第261条第1項によって、代表取締役の選任は取締役会の専決事項とされています。しかし、最初の取締役や監査役を定めることはできます。ただし、発起人として署名(記名)押印していない取締役や監査役については就任承諾書として援用できず、その人たちの就任承諾書を別途作る必要がありますので、注意してください。発起人以外の人が役員のほとんどというときは、発起人会議事録などで就任承諾の旨を記載し、選任したことと就任したことを証する書面を兼ねさせた方がいいと思います。代表取締役については取締役会で、本店の所在場所の決定(これは定款で具体的に定めてもかまいません)とあわせて選任し、就任承諾の旨を記載しているのが通常です。なお、募集設立の場合は、商法第183条により創立総会で取締役及び監査役を選任することになっています。

 
Q09(株主総会議事録の署名者)
取締役及び監査役改選の場合の株主総会議事録の署名(記名)者について教えてください。

A09
まず、定款により通常の定時総会終結時をもって任期満了退任する場合は、株主総会に出席した従前の取締役全員が署名(記名)押印することとなります。新たに就任した取締役は記名(署名)押印する義務はありません。つまり就任承諾した旨が記載されていれば、そのままで新取締役の就任承諾書になるわけです。ただし、記名(署名)押印してもさしつかえありません。単に増員、または補欠の取締役の選任をする場合は、定時総会、臨時総会を問わず出席した従前の取締役およびその場で就任承諾した新任の取締役の全員が記名(署名)押印する義務があります。次に数年間取締役の選任も怠って任期切れとなっている場合は、定時総会、臨時総会に出席した従前の取締役及び出席し就任承諾した新取締役全員が記名(署名)義務者となります。

Q10代表取締役の改印届に添付する印鑑証明書と登記簿の住所が相違する場合)
届出印をなくしたので、あわてて改印届を出そうとしましたら、印鑑証明書に記載された住所と登記簿の代表取締役の住所とではマンションの部屋番号が違うので、住所変更登記と同時に出さなければだめだと言われました。

A10
同一のマンションのなかで引っ越しして部屋番号のみが変わる場合でも、どちらにも部屋番号が入っている以上は、登記された代表取締役の住所が移転したことが明らかですから、当然、代表取締役の住所変更登記と改印届を併せて提出するよりありません。たとえ、住民票を添付して住所の変更事実を証明しても認められません。他にも先例では、株式会社○○を○○株式会社と株式会社の位置を入れ替えるだけでも商号変更の登記を提出しなければならないとされています。面倒ですが、住所変更登記をしてください。ただし、この登記には住民票の添付は必要ありません。

Q11(登記の懈怠と過料通知)
今回役員変更登記をしたら過料通知が裁判所からきましたが、登記の懈怠について説明してください。

A11
商業登記は会社などに関する一定の事項を登記して、取引の安全と円滑をはかり、また会社の信用保持に役立てる制度ですから、会社の代表者に登記の申請を義務づけています。そこで、登記すべきなのに一定期間内に登記をしなかった場合には、行政罰として会社の代表者個人(過料の対象となる登記の発生時の)に100万円以下の過料を課することになっています。
この一定の期間を登記期間と言います。これを過ぎても登記を受け付けてもらえなくなるということはありません。過料の制裁があるということです。
設立登記は、一般的に発起設立のときは取締役及び監査役の調査手続終了の日、募集設立のときは創立総会終結の日より2週間以内に登記を申請します。
役員変更、目的変更、商号変更、本店移転などの登記は、変更が生じてから本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内にすることに定められています。
役員変更の場合、全員そのままだから、株主総会で選任決議もせずにいると選任懈怠、選任はしたが登記は怠っていると登記懈怠となり、どっちも怠ると両方について懈怠となります。つまり、変更登記をしないでいいということはありません。
取締役の任期はほとんどの会社では就任後2年内、監査役の任期は3年内の決算期に関する定時総会終結時となっており、少なくとも再選重任の登記は不可欠だからです。

Q12(ひらがなの商号その他に「・」を使用することの可否など)
ひらがな商号に「・」とかをいれてもいいでしょうか。

A12
商号をひらがなにしてもさしつかえありませんから、「株式会社さくら」という商号は登記できますが、「株式会社ぱーらー・れもん」というような(ー)や(・)が入っている商号は認められません。かたかなで「株式会社パーラー・レモン」とします。
漢字やかたかなの商号は数多くありますがひらがなの表記の商号はそんなにありません。
(商号がかたかなの場合は、株式会社 ハナコ・インターナショナル 、株式会社エー・エス・エム【エーエスエムでも登記できるが、誤読を防ぐためにエー・エス・エムと中黒点を入れます】などとできます。)(登記研究第407号 参照)。
また「株式会社東京・美紀」や「株式会社緑・ハウジング」も受理されません。これらは「株式会社東京美紀」や「株式会社緑ハウジング」とします。
その他では「株式会社零」や「株式会社九六」は登記できても、「株式会社0」や「株式会社96」とすると登記できません。それから「株式会社株式会社」「株式会社カブシキガイシャ」といった商号も当然登記をすることはできません。

Q13(支店所在地での登記申請書を郵送する場合の申請書記載の日付)
本店所在地での登記完了後、支店所在地での登記申請を郵送ですることにしましたが、登記申請書の申請年月日は空白にしておいてさしつかえありませんか。

A13
空白にするというのは、おそらく管轄の法務局の方で申請書を受け取った時点で、申請年月日を記載することになるから、日付は空白にして郵送すればいいのではないかということだと思いますが、通常は、発送日を登記申請書に記載して郵送で申請しています。(登記研究第425号 参照)

Q14(政令指定都市の場合の本店、支店、代表取締役の住所の記載の仕方)
東京都の場合は、東京都から本店などを記載していますが、横浜市仙台市に本店がある会社は神奈川県、宮城県を省略して記載していますが、どうしてですか。

A14
商業登記の先例で、政令指定都市都道府県名と同名の市を除いては、都道府県名を記載するのが相当であるとされていますので、政令指定都市では省略して記載する場合が一般的になっています。なお、東京都の場合は政令指定都市ではありません。(昭32.12.24民甲第2419号、登記研究第123号 参照)

Q15(本店と同一管轄内の他の区に本店、支店を設置する場合の登記申請など)
東京都千代田区に本店のある会社が中央区に支店を設置する場合、本店、支店の登記はどうなりますか。

A15
管轄が同じなので、千代田区にある本店の登記簿に支店設置の登記をすれば、それで登記は完了です。中央区に支店を設置しても、中央区には登記簿は新規にもうけられません。あくまでも同一管轄の場合は、登記簿は一つしかありません。ただ、中央区に支店がある以上、商号調査簿には記載されるので類似商号となる会社は中央区では新たに登記できないことになります。登録免許税は支店設置の本店分が6万円で、支店分の登録免許税(9千円)は不要です。設置した後、役員変更や、目的変更など本店、支店所在地ともする登記について、登記する場合は本店分の登録免許税のみかかることになります。また、同一管轄の中で本店移転する場合は、登録免許税が3万円となり、たとえば中央区の棚から、千代田区の棚へ登記簿が移されることになります。(明33.2.12民刑第147号 参照)

Q16(代表取締役の死亡と残りの取締役2名による代表取締役の改選)
代表取締役が死亡して取締役2名になってしまった場合の後任者選任について説明してください。重要な取引があるので代表取締役を急いで選び直したいのですが。

A16
取締役2名の中から代表取締役を選任してさしつかえなければ取締役会を開き、新たに代表取締役を選任してください。この取締役会議事録には個人の実印を押し、印鑑証明書を各1通添付します。印鑑届に添付する代表取締役個人の印鑑証明書は取締役会議事録添付のものを援用する旨を記載してください。後任の取締役を選任するための株主総会をすぐ開くことができない場合は、取締役に1名の欠員がありますが、取締役2名のままで「取締役、代表取締役の変更」として、「取締役兼代表取締役○○○○は、平成○年○月○日死亡」、「平成○年○月○日下記の者就任 住所 代表取締役 ○○○○」というように登記することができます。その後で臨時株主総会を開催して、取締役の選任して、欠員取締役を補充する登記をすればさしつかえありません。また、2度の登記申請ではなく、すぐに株主総会が開催できるならば、新しい代表取締役が登記前に株主総会を招集して取締役を選任し、「平成○年○月○日下記の者就任 取締役 ○○○○」というように書き加え、同一の申請書で一回で登記することもできます。(登記研究第213号 参照)

Q17(株主1名の会社の役員変更と株主総会決議)
株主1名の会社でも役員の選任は株主総会でするのでしょうか。

A17
1名の株主の会社でも株主総会を開催します。ただし、招集手続きは省略できます。(最判昭46.6.24 参照)

Q18(第三者割当による新株発行と株式払込金保管証明書の摘要欄の記載相違)
三者割当てで株主の一部が引き受けたのに、銀行の新株発行の株式払込金保管証明書の摘要欄に株主割当と記載されていますが、この証明書で登記の申請はかまわないのでしょうか。

A18
摘要欄の記載が「第三者割当」となっていても登記実務では受理されていますのでさしつかえありません。「増資」とのみ記載してある場合、空欄のままになっている場合も同じです。また「株主割当」なのに摘要欄に「第三者割当」と記載されている場合も問題ありません。

Q19(支店所在地における役員変更登記の添付書面)
本店で役員変更登記を完了して支店所在地において変更登記をする場合、添付書類は本店の登記簿謄本だけでいいのでしょうか。

A19
たとえば前回の本店、支店での役員変更が全員重任であり、今回も全員重任であれば、登記簿謄本だけで登記すべき事項が明らかですから、本店で提出したときと同様に役員欄の「登記用紙と同一用紙」を付けて登記の申請をすればさしつかえありません。ところが、退任する取締役、監査役と、就任する取締役、監査役がいると、現に効力のある事項のみの記載のある登記簿謄本のみでは、登記すべき事項がすべて出てきませんから、閉鎖された役員欄の謄本をも添付する必要があります。
一例として取締役Aが退任したことは、閉鎖された前の役員欄にのみ記載されており、現在の役員欄にはBが就任した旨の記載しかないからです。当然、支店でも取締役Aの退任について同じく登記する必要があり、それを証明するため閉鎖役員欄謄本が添付書類の一部になります。

Q20(株式分割の可否)
配当可能利益の資本組入れにより、最低資本金制度をクリアーするため資本の額を500万円から1,000万円にしたのですが、発行済株数の総数100株×額面株式1株の金額5万円をかけると500万円にしかなりません。なんとか1,000万円にあわせることはできませんか。

A20
資本の額1,000万円にするためには、会社の発行済株式の総数を200株にする必要があります。この方法としては、株式の分割があります。つまり、1株を2株に分割すればよく、実際には各株主はその持株数に応じて新株を無償でもらえることになります。要件としては、1株当たりの純資産額が5万円以上あること、取締役会で株式分割決議をすること、割当日公告をすることなどとされています。額面株式1株の金額が5万円で、会社の純資産が1,000万円以上あるようであれば、以上の手続きによって、発行済株式の総数を200株、資本の額を1,000万円にあわせることができます。

 

株式会社関係 有限会社関係


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有限会社関係

Q01(代表取締役の互選と取締役会議事録)
代表取締役を取締役の互選により選任する旨の定款の規定はあるが、取締役会を設置する旨の規定が定款にない有限会社の場合、取締役会議事録を添付して登記の申請ができますか。

A01
有限会社では、「取締役の過半数の一致のあったことを証する書面」が添付書類となっていますが、「取締役会議事録」または「取締役決議書」のいずれであっても、登記の申請は受理されます。ただし、互選規定のあることを証する定款をも添付してください。(登記研究第339号 参照)

Q02(有限会社の役員変更登記と同一用紙)
監査役を置いている有限会社の場合にも、監査役に変更がなくても取締役の全員が変更になったら、別紙(役員欄と同一の用紙)に記載して登記の申請をする必要がありますか。

A02
有限会社は、別紙ではなく、登記申請書に登記すべき事項として、取締役全員の変更事項を記載する事になります。有限会社の場合、監査役を含めた役員全員の変更については、株式会社の規定が準用されるものの取締役全員(代表取締役を含む)の変更については準用されていないからです。(商業登記規則第80条第2項、第6項、第93条 参照)

Q03(代表取締役の互選の場合に添付する定款)
代表取締役を互選規定で選任する場合に添付する定款は原始定款でいいのですか。

A03
設立登記以後、何も変更がなければ、原始定款をコピーして当会社の定款に相違ない旨を代表取締役が記名押印すればさしつかえありません。なかには、設立時と商号、本店、目的、社員の住所、氏名、出資の総額等に変更がある場合があります。そうすると原始定款では駄目ということになります。少なくとも現在の登記簿、議事録と相違しない定款が必要になります。原始定款に今までの定款変更に関する社員総会議事録をまとめて割印したものか、または、あらためて作りなおした定款に代表取締役が現行定款である旨を記載して押印したもののいずれかです。いずれにしろ、登記簿などと内容が違っているものではいけません。また互選規定だけ抜き書きした定款の一部抜粋も同様に認められていません。登記の先例では定款の全部を添付することになっています。(登記研究第449号 参照)

Q04(後任者がいない場合の監査役の辞任登記の可否)
監査役が辞任したのですが、後任者がみつかりませんので、とりあえず辞任登記だけ申請したいのですが。

A04
有限会社の監査役については株式会社と違い、置くことを義務づけられておりませんから、監査役が登記されているのは定款にも監査役を置く旨の記載がある(監査役を置くことができるというような曖昧な規定は認められていませんから)ことになります。そこで社員総会を開催し、定款を変更して監査役を置くという規定を廃止して、その議事録を添付して申請すれば監査役の辞任登記の申請は認められます。具体的には、「第何条 当会社には、取締役何名及び監査役何名を置く。」とあれば、「第何条を次のとおり変更すること。」として「第何条 当会社には、取締役何名を置く。」と記載します。

Q04(取締役が1名の場合の本店所在場所の意思決定)
有限会社の設立の登記で取締役が1名の場合は、定款には「当会社は本店を千葉県松戸市に置く。」としか規定しなくても本店の所在場所を決定する書面はいらないと聞いたのですが。

A04
取締役が2名以上いる場合は、取締役の過半数の一致という問題がありますが、1名の場合は、その問題を考慮する必要がないからです。登記申請書や登記用紙と同一用紙の商号・資本欄や役員欄、印鑑届(印鑑紙)などに本店の記載をしておけば1名の取締役の意思決定はそれで明らかですので、さしつかえありません。(登記研究第329号、第336号)

Q05(取締役が1名の場合の本店移転の意思決定)
取締役が1名の場合は、本店移転登記の申請には議事録はいらないのですか。

A05
定款変更が必要な場合は、社員総会議事録あるいは総社員の同意書が必要になりますが、定款変更が不要なケースのときはその必要はありません。取締役が決定できることがらについては1名しかいない取締役の場合、その意思表示によります。登記申請書に、登記の事由 本店移転、登記すべき事項 平成何年何月何日本店移転と記載し、本店 何県何市何町何丁目何番何号という具合に記載をしてください。委任状による代理申請の場合は、委任事項にその旨を書くことになります。(登記研究第379号 参照)

Q06(社員総会で代表取締役を選任する会社の場合の代表取締役のみの辞任登記の可否)
代表取締役の辞任届を添付し、他の取締役を社員総会で代表取締役に選任して登記の申請ができますか。

A06
定款の規定により社員総会で選ばれた代表取締役代表取締役のみを辞任することは原則として認められませんから、辞任届による辞任はできません。社員総会の席上で辞任をする旨の意思表示をして、辞任の承認決議をしたうえで、新しい代表取締役を選任すればさしつかえありません。社員総会で選出された代表取締役は被選任者としての就任承諾書は添付書類としては不要ですが、社員総会議事録にはその旨を記載しておいた方がいいと思います。(登記実務)

Q07(代表取締役の就任承諾書)
定款の定めや、社員総会の選任決議の場合には、代表取締役の就任承諾書が不要なのですか。

A07
定款の規定により定められた代表取締役、あるいは定款の定めにより社員総会で選ばれた代表取締役は就任承諾をわざわざする必要がないからです。元来、有限会社は取締役が各自会社を代表します(有限会社法第27条)から、取締役に選任され、就任承諾をすることは会社を代表する取締役として、すでに就任承諾する意思があることになります。そこで、改めて代表取締役を選任するのは、他の取締役の代表権を単になくすということだけですので、代表取締役としての就任承諾はいらないのです。(登記実務)

Q08(代表取締役ではない取締役が辞任した場合)
会社の定款では、取締役を1名以上3名以内を置くとなっており、また取締役が2名以上あるときは、取締役の互選により代表取締役1名を定めるとなっていますが、取締役2名のうち代表取締役ではない取締役が辞任しました。会社の都合でとりあえず、後任の取締役は置かず、辞任登記だけしたいのですが。

A08
登記の事由を「取締役の変更/代表取締役の氏名抹消」、登記すべき事項を「取締役何某は、平成何年月何日辞任/同日取締役が1名となったため、代表取締役甲某の氏名抹消」の登記を取締役甲某が申請することになりますが、代表者のの肩書が代表取締役甲某から、取締役甲某となるため、新肩書の印鑑紙を登記申請と同時に再提出してください。(商業登記規則第9条の4)

Q09(代表取締役ではない取締役が死亡した場合)
当会社の定款では、「取締役は甲某、乙某の2名とする」、「代表取締役は甲某とする」となっていますが、乙某が死亡しましたので、代わりに丙某を取締役に選任しました。この場合の登記はどうなりますか。

A09
社員総会で、乙某が死亡したのにともない「取締役は甲某、丙某の2名とする」と定款変更の決議をします。後は、普通のとおりに、登記の事由を「取締役の変更」、登記すべき事項を「取締役何某は、平成何年月何日死亡/平成何年何月何日下記の者就任/住所記載/取締役 丙某」とする有限会社の変更登記を代表取締役甲某が申請します。

Q10(社員総会議事録の出資口数・議決権の記載)
社員総会議事録のところに、「社員総数 何名/この出資口数 何口(以下省略)」と記載してあるのと、「社員総数 何名/この議決権 何個(以下省略)」と記載してある場合がありますが、どちらが正しいのですか。

A10
どちらでも正しいとされていますので、どちらで記載してもさしつかえはありません。ただ会社成立前の社員総会では、「社員総数 何名/この出資口数 何口(以下省略)」、それ以降は「社員総数 何名/この議決権 何個(以下省略)」と記載している場合が多いようです。有限会社の定款には「議決権」に関して「各社員は出資1口につき1個の議決権を有する」旨の定めがあるのが普通ですから、原則として「何口」と「何個」は一致します。そして、議決権を「出資何口について何個」と定款で別段の定めをすることもできます。

Q11(有限会社の英文表示)
有限会社の英文表示はどうなりますか。

A11
次のように記載しておけばさしつかえないと解します。
(商号)
第1条 当会社は、有限会社山田と称し、英文では、YAMADA Co., Ltdと表示する。 

第1条 当会社は、有限会社山田と称し、英文では、YAMADA CO., LTDと表示する。 

注 Co., Ltd.(limited companyの省略形) 

  有限責任会社のこと。通常は株式会社のこと。有限会社にも使用するが区別が曖昧。

株式会社関係 有限会社関係


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参考図書
「登記研究」(月刊)、「登記関係先例要旨総覧」、「増補商業・法人登記質疑応答集」
以上 発行 テイハン(TEL03-3811-5312)
「月刊登記先例解説集(平成8年4月から「月刊登記情報」に改題)」(月刊) 
上記 販売 きんざい(TEL03-3358-0019)(発行所 社団法人民事法情報センター)

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