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新しい破産法の概要
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破産法改正
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破産法の平成16年改正点(個人債務者)
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「平成16年改正破産法の概要」弁護士 村田英幸
http://www.murata-law.jp/html/l6_tosan1.html



「平成16年改正破産法の概要」
弁護士 村田英幸

第1 改正の経緯
破産法改正の目的
  平成16年5月25日、改正破産法は成立し、6月2日公布されました(平成16年法律第75号)。施行日は公布日から約1年以内位とされています。
平成8年から法制審議会において倒産法全般の見直し作業が開始され、不況の深刻な悪化を受けて、立法のスピードはあがり、平成11年の民事再生法の制定(平成12年施行、和議法は廃止)を皮切りに、平成12年に、個人版民事再生手続の創設(平成13年施行)、国際倒産法制の整備(平成12年制定。以降順次改正)、平成14年に会社更生法の全面改正(平成15年施行)等が行われました。
今回(平成16年)の破産法改正は、破産手続の迅速化、合理化、公正の確保、実効性を実現するために、なされたものです。

改正破産法の構成
  旧破産法が実体規定、手続規定の編別になっていたのを改め、民事再生法や新会社更生法と同様に、手続の流れにそった規定ぶりになっています。

破産法の改正項目は、大きくわけて、
(ア)破産手続、(イ)個人破産と免責、(ウ)倒産実体法、
(エ)倒産犯罪、(オ)倒産手続間の移行、に分けられます。
以下、今回改正された点を中心に、改正破産法の要点を概説します。

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第2 破産手続に関する改正
破産手続開始
  旧法の「破産宣告」という言葉を、他の倒産手続と同様に、「破産手続開始」という用語に改められました。「宣告」という言葉には重い響きがあり若干時代遅れであること、他の倒産手続と合わせる意味で、用語を改めたものです。

破産手続開始の申立
  (1)
管轄
管轄裁判所の拡大が図られました。
親子会社(5条3項・4項)、連結親子会社(5条5項)、 法人代表者(5条6項)、個人連帯債務者及び主債務者と保証人の関係にある個人・夫婦(5条7項)
これらの関係にある会社ないし人が他の裁判所に倒産事件が係属しているときには、競合管轄が認められました。これらの規定については対象となる異種の倒産手続の違いがあります。すなわち、親子会社関係は破産・民事再生・会社更生手続を網羅していますが、法人代表者の場合には法人が破産・民事再生のとき、個人連帯債務者・夫婦は破産のみに限られています。もっとも、個人連帯債務者・夫婦の場合、自然人については、会社更生手続はそもそも適用がありません。
債権者多数の事件については、以下のとおり、管轄裁判所の拡大が図られました。
債権者500人以上の場合には、高等裁判所所在地を管轄する地方裁判所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、高松)にも管轄が認められました(5条8項)。
債権者1000人以上の場合には、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にも管轄が認められました(5条9項)。
これらの管轄により、事案の処理に適切な裁判所の選択が可能となり、また、専門的処理体制の整った大規模庁(高等裁判所所在地の地方裁判所)または東京地方裁判所および大阪地方裁判所の利用が可能となり、破産手続の円滑な進行に資するものです。

(2)
保全処分
?@ 強制執行等の中止命令(24条)
改正法は、破産債権や財団債権に基づく強制執行等の場合にも、中止命令を発令できると制度を新設しました。
新設された規定です。民事再生法会社更生法には同様の規定がありましたが、旧破産法には規定がありませんでした。

?A 包括的禁止命令(25条)
強制執行等を包括的に禁止する命令です。
新設された規定です。民事再生法会社更生法には同様の規定がありましたが、旧破産法には規定がありませんでした。
禁止命令の対象は、破産債権だけでなく、財団債権に基づく強制執行・一般先取特権の実行、国税滞納処分を含みます(国税は滞納処分より1年前のものは財団債権となります)。

?B 保全管理命令(91条)
保全管理命令を発令できるのは、債務者が法人の場合に限定されています。 個人の場合には、事業用財産と家事用途のものと区別が難しいなどの理由から、保全管理命令の対象から、個人を除外したものです。もっとも、魚市場の仲卸売商人のような営業権があり、破産するとその営業権が喪失する場合の個人について、破産前に換価するために保全管理命令を発令できないという立法上の欠陥が残されてしまいました。

?C 否認権のための保全処分(171条、172条)
破産手続開始がされた後に破産管財人が否認権を行使するための保全処分で、旧破産法にはなく、改正法で新たに認められたものです。

破産手続開始の効果
  (1)
破産者等の説明義務の強化
旧破産法でも破産者等は説明義務を負っていました(旧153条)。この点は、改正法でも変わりません(新法40条)。 改正法により、説明義務を負うものが、従業者・元従業者にも拡大されましたが、裁判所の許可のある場合に限定されています(40条1項5号・2項)。

(2)
重要財産開示義務(41条)
債務者は、重要な財産について、申立にあたって、開示する義務を負い、書面に記載して裁判所に提出しなければなりません。もっとも、旧法でも、同様の運用がなされていました。
なお、個別執行である民事執行法では、一定の債務名義を有する者に対して、財産を開示する制度を設けています。

(3)
説明義務違反罪が重罰化(268条・269条。旧法の懲役1年から改正法では懲役3年へ改正)され、破産者等の説明義務の強化が図られています。

(4)
破産管財人の職務執行の確保
裁判所の許可に基づく警察上の援助(84条)、職務妨害罪(272条)が新設されました。
これらの制度は、破産管財人の業務を円滑ならしめるためであり、破産管財人にとっては、朗報です。個別執行である民事執行法では、執行官に対する同様の保護があったのに、包括執行である破産手続では旧破産法では破産管財人に対する保護がありませんでした。

破産債権等
  (1)
債権者集会の任意化
財産状況報告集会が省略できる場合が規定されました(31条4項)、破産管財人の計算報告集会が省略できる場合が規定されました(89条)
債権者集会の必要的決議事項としては、
___ 破産者の扶助料の支払いの可否(旧192条1項)
___ 事業の継続の可否(旧192条1項)
___ 高価品の保管場所の指定(旧192条2項)
___ 監査委員の選任(旧170条)
___ 破産管財人の解任(旧167条)でした。
高価品の保管場所の指定は、裁判所によることとなりました(改正破産法規則)。
破産者に対する扶助料の制度、監査委員の制度は、そもそも制度自体が廃止されました。
改正法では、事業継続は、裁判所の許可によることとされました(36条)。
改正法では、破産管財人の解任は利害関係人の申立て又は職権により破産裁判所が判断することとなりました(75条2項)。

(2)
債権者委員会制度の創設(144条以下)
監査委員制度が廃止されたことにより、債権者の利益保護のために新設されたものです。

(3)
債権届出
異時廃止見込みの場合の債権届出期間、債権調査期間の定めの省略ができるようになりました(31条2項・3項)。旧法下の大坂地方裁判所での運用をもとにしたものです。
ただし、東京地方裁判所では、異時廃止の見込みが判明するには時間がかかることから、この方式は採用しない予定です。旧法下での東京地方裁判所の運用は、債権調査期日において、異時廃止の見込みのときは、債権調査を留保して、ただちに異時廃止決定をなすことによって対応していました。したがって、新法下でも、この方式が運用上、使われる可能性が高いものと思われます。

(4)
届出期間の制限
債権届出は、原則として、一般調査期日・期間内(112条)に限られます。

債権調査
  (1)
債権調査期間の制度が設けられたことにともない、債権調査期日において調査する方式と、書面による債権調査期間の方式のいずれかを選択できるようになりました(116条1項・2項)

(2)
債権確定
異議ある債権を決めるために、決定による債権査定決定手続が導入されました。旧法では、異議のある債権の確定のためには破産債権確定訴訟という訴訟手続によっていました(旧244条以下)が、時間・費用がかかるという批判がありました。新法は、査定手続により、簡易・迅速に債権の有無・金額を決定することを目的としたものです。
査定申立期間が限定されています(125条)。旧法では、破産債権確定訴訟を提起するのに時期的制限はありませんでしたが、新法では、査定申立の出訴期間を限定することにより、破産債権の確定をすみやかにすることとしました。
破産債権査定の決定に対して異議のあるものは、破産債権査定異議の訴え(126条以下)を提訴することができます。

労働組合等の手続関与
  労働者保護のために、破産手続開始決定の通知(32条3項4号)、破産管財人の情報提供努力義務(86条)の制度が設けられました。

破産財団の管理
  (1)
破産管財人貸借対照表作成義務
破産管財人は、原則として貸借対照表などの作成義務を負いますが、一定額以下の破産財団しかない場合には、破産管財人は、貸借対照表の作成義務を免除されます(153条3項)。

(2)
財団財産の引渡命令
財団財産の引渡命令(156条)は、破産者に対して決定による手続で、破産財団に属する財産を引き渡すことを命じるもので、新たに設けられたものです。
旧法では、破産者が破産財団に属する財産を引き渡さない場合に、破産宣告決定を債務名義として強制執行できるかについては、解釈上争いがあり、東京地方裁判所執行部の見解では、破産宣告決定には執行すべき財産の特定がないので、破産決定を債務名義として強制執行することができないとする見解をとっていました。しかしながら、包括執行である破産手続で、個別に債務名義を要するとすると、その実効性が著しく薄れます。そこで、破産手続を実効的かつ迅速にするために、この規定が設けられたものです。

(3)
破産管財人の行為の許可
破産管財人が訴えの提起など一定の行為をするためには破産裁判所の許可が原則として必要です(78条1項)が、例外として、破産裁判所の許可に関する裁量(78条2項15号、3項)の規定が新設されました。

(4)
法人の役員の責任の査定手続
法人の役員の損害賠償責任査定制度の導入(178条以下)は、簡易迅速な手続で、法人の役員についての損害賠償責任を追及する制度を設けたものです。すでに他の倒産法(民事再生法会社更生法など)では、導入済みの制度でしたが、旧破産法では、同様の制度がなく、訴訟によるしかなかったため、破産手続の迅速化を図るため、新設されたものです。

破産財団の換価
  (1)
任意売却・担保権消滅請求制度(186条以下)
消滅許可申立て(186条。財団組入れを含む=組入れ額の協議義務、売得金の意義=186条1項1号参照)
破産財団の形成を図る利益と担保権者の利益の調節を図るために、破産管財人は担保権者と事前に協議する義務を負います(186条2項、3項7号)。また、担保権者の利益を不当に害する担保権消滅許可申立は却下されます(186条1項但し書き)。
担保権者による対抗措置としては、以下の2つの方策があります。
?@ 担保権実行申立て(187条。合意による排除)、
?A 担保権者の買受申出(188条。破産管財人許可申請した売買代金額の5%の増価の必要があります)→消滅許可決定(189条)→金銭納付・登記抹消嘱託(190条)→配当実施(191条)

(2)
商事留置権の消滅請求(192条)
商事留置権とは、商行為によって生じた債権に基づき、商人(典型例は会社です)が占有する物品等をとどめ置いて、その物品等から優先的に債権の弁済を受けられる権利です。
破産管財人による商事留置権の消滅請求は、「当該財産が継続されている事業に必要なものであるとき、その他財産の回復が破産財団の価値の維持又は増加に資するとき」に認められます。

配当手続
  (1)
配当公告に代わる通知の制度(197条)
旧法では配当をする場合には官報公告を必要としていました(旧260条)が、改正法は通知をもって代えることができるとしています。

(2)
別除権者の配当参加
?@被担保債権が担保されなくなったことによる配当参加(108条1項、198条3項)
旧法と同様の配当参加の方法です(旧277条参照)。
?A根抵当権の特則(196条3項、198条4項)
旧法では、根抵当権の極度額を超える額についても配当の可能性があることを理由として、別除権の実行処分又は放棄がなされない限り、根抵当権者の配当加入は認めないのが実務の取扱いでしたが、新法は、極度額を超える額については、当然に配当参加できると規定しました。

(3)
少額配当の特例
配当額が1000円未満の少額配当については、受領意思の届出が必要となります(111条1項4号、201条5項)。

(4)
簡易配当の特例
?@簡易配当
簡易配当ができる場合として、以下の場合が定められました。
(ア)配当額の合計が1000万円未満の場合(204条1項1号)
(イ)破産手続開始時に異議の有無を確認してする場合(同条1項2号)
(ウ)配当時に異議の有無を確認してする場合(同条1項3号、206条)、
?A簡易配当の内容(204条、205条)
(ア)債権者への周知方法を、旧法では官報公告をも必要としていたのを廃止し、個別通知に限定しました。官報公告が実務上数週間かかっており、しかも、実際上官報を見る債権者が殆んどおらず、かつ、官報への配当公告は2万7525円を要していたため、時間・労力・費用の無駄との批判があったことによります。
(イ)除斥期間を旧法の2週間(旧273条)から1週間に短縮しました。
(ウ)配当表に対する異議申立についての即時抗告を許さないこととしました。
(エ)配当額を定めた場合の債権者への個別通知を省略できることとしました。

(5)
同意配当(208条)

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第3 個人破産に関する改正
自由財産
  自由財産とは、破産手続の対象とならず、破産者が自由に処分してよい財産をいいます。
個別執行の民事執行法での差押禁止財産に対応するものです。
自由財産となる金銭の範囲が拡大されました(34条3項1号。差押禁止金銭の1.5倍=99万円)。旧法では民事執行法131条3号が当時の政令で定めていた21万円と解釈されていました。
自由財産範囲拡張の裁判(同条4項)の制度が新たに設けられました。

免責制度
  (1)
破産手続開始の申立と同時に免責申立が可能であると法律上明記されました(248条1項)。

(2)
みなし申立て(248条4項)は、破産手続開始の申立があったときは、反対の意思表示がない限り、免責の申立がなされたものと擬制することをいいます。新法で新たに設けられました。

(3)
免責手続中の個別執行禁止(249条)
免責手続中は、非免責債権を含めて、全面的に個別執行等が禁止されます。旧法では免責手続中は個別執行が可能であった点(最判平成2年3月20日民集44巻2号416頁)について破産者の保護に欠けるとの批判があったため、新法で設けられました。

(4)
免責調査方法の任意化・管財人による調査(250条)
免責不許可事由の調査方法などが簡素化・合理化されました。
?@破産者の調査協力義務の新設(250条2項)
?A審尋期日の任意化
?B債権者の異議制度を、意見申述制度(251条)に改めました。
免責手続中の強制執行禁止(249条) 。

(5)
免責の裁判
?@裁量免責の明確化(252条2項)
旧法でも、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量による免責ができると解するのが通説でしたが、これを明確化したものです。
?A免責不許可期間の短縮(旧法の10年間から7年間へ短縮しました)(252条1項10号)。

(6)
非免責債権の拡大
旧法では免責対象となっていた以下の一定の債権(ただし故意ある不法行為債権については旧法でも非免責債権であった。旧法366条ノ12第2号)については、債権者の保護に欠けることを理由に、新たに、非免責債権に加えられました。
?@生命身体関係の故意・重過失の不法行為(253条1項3号)
?A扶養料(同条項4号)

相続財産破産
  破産手続開始申立後開始決定前の債務者の死亡の場合、続行決定制度が新設されました。続行申立てのない場合には、破産手続が終了します(226条)。

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第4 倒産実体法に関する改正
賃貸借契約
  (1)
賃借人の破産
民法621条が削除され、破産した賃貸人からの解約申入れはできなくなりました。
賃借人が破産したときは、賃借人には、何ら責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、賃貸人からの解除を認める民法621条の適用があるとすると、賃借人に酷であることが理由です。

(2)
賃貸人の破産
?@対抗可能な賃借権についての解除の禁止(56条。なお、対抗要件を具備したライセンスも同様)、
?A賃料債権の処分の期間制限(旧63条)・相殺制限(旧103条)が廃止されました。また、賃借人が賃貸人(破産者)に差し入れた敷金は、破産管財人に対する寄託請求(70条)により保護されます。
なお、民事再生手続・会社更生手続では、賃料による相殺は6ケ月分を限度に認める(民再92条2項)、敷金については賃料6ケ月分を限度に共益債権として保護(同条3項)

相場がある商品の取引(58条)
  デリバティブ取引に対応

租税債権
  財団債権の範囲の限定 法定納期限から1年以内のもの(148条1項3号)を財団債権とし、それ以外は優先的破産債権(その付帯税は劣後的破産債権)とする改正が行われました。これは租税債権の優先順位を一部繰り下げたものです。旧法では、租税債権の弁済しか行われない異時廃止事件が、法人の破産事件の過半数、自然人の破産事件の圧倒的多数を占めており、次順位の優先的破産債権であった労働債権すら配当がなされませんでした。このような事態に対しては、批判が強かったため、租税債権の一部の順位を繰り下げ、労働債権の一部の順位を財団債権に格上げすることによって、労働債権の保護を図ろうとする目的に基づくものです。

労働債権
  倒産3ケ月前の給料債権および退職金債権(3ヶ月間の給料相当分)を財団債権に格上げしました(149条)。これによって、労働者の保護を手厚くしようとするものです。 優先的破産債権となる労働債権の弁済許可制度(101条)が新設されました。財団債権の場合には、随時弁済の対象となります(151条、152条)が、この制度は、優先的破産債権に過ぎない労働債権についても、随時の弁済を認めようとするものです。旧法では、配当の対象となる場合でも、他の破産債権と同時に配当が実施されるため、配当を受けるまでの間、労働者が困窮する事態が見受けられましたが、この制度により、労働者保護につながります。

約定劣後債権(劣後ローン)
  劣後的破産債権に後れる合意のある債権は、劣後的破産債権に劣後すると定められました(99条2項)。

財団債権
  財団不足の場合には管理費用等が優先することが定められました(152条)。
財団債権について、強制執行等の禁止・中止、滞納処分の禁止(42条1項2項)の規定が新設されました。財団債権については無制限で行使できるのではないかという解釈上の疑義があったので、新設されたものです。

物上保証人
  物上保証人が主たる債務者等に対する求償権を行使する前提として、債務全額の弁済が必要です(104条5項)。旧法でも、同様に解されていました(最判昭和62年7月2日金融法務事情1178号37頁、最判平成14年9月24日民集56巻7号1524頁)。改正法は、最高裁判例を明文化したものです。

否認権
  (1)
否認権の規定の整理
否認権については、旧法下で、判例・学説上、解釈上の争いがありました。そのため、新法は、否認権の規定を整理し、否認できる場合を明確にしました。

(2)
詐害否認の要件(160条)
?@ 故意否認(160条1項1号)
旧破産法72条1号と同旨の規定です。
?A 危機時期後の否認の容認(160条1項2号)
旧法では、支払停止以降のいわゆる危機時期について詐害否認が許されるか、解釈上、争いがありました。判例は、これを認めていました(大判昭和7年12月21日民集11−2266、最判昭和42年5月2日民集21巻4号859頁)。
そこで、新法は、許されることを明確化したものです。
?B 代物弁済等のうち対価的均衡を欠く部分のみが詐害否認の対象となることを明確化(同条2項)
旧法では、相当な対価を得て代物弁済等をした場合に否認権の対象となるか、解釈上、争いがあり、また、対価的均衡を欠く部分のみが詐害否認の対象となるかが争いとなっていました。
そこで、新法では、この点を明確化したものです。
?C 無償否認(同条3項)
旧72条5号と同旨の規定です。

(3)
適正価格処分行為の否認(161条)
適正な価格をもって処分した行為について否認権を原則として行使できないものと規定しました。旧法では、解釈上、争いがありました。新法では、
?@財産の種類の変更による隠匿等のおそれ、
?A破産者の隠匿等の意思、
?B相手方の悪意がいずれもある場合にのみ、否認できると規定しています。

(4)
偏頗否認の要件(162条)
旧法72条2号以下では、偏頗行為の否認権の対象となる時期を、支払停止を基準時としていましたが、改正法は、これを改め、支払不能を基準時としています。
また、同時交換的行為は否認の対象外とする規定が新設されました。緊急時の救済融資などの同時交換的行為が否認権の対象となると解すると、救済融資などをしようとするものがいなくなってしまうので、改正法は否認権の対象外としたものです。

(5)
危機否認の時期的制限(166条)
旧84条では、破産宣告から1年以上前の行為は支払停止を理由に危機否認できないと規定していました。しかし、破産宣告を基準時としてしまうと、裁判所が破産宣告を遅延した場合などの偶然的な事情によって、否認できない不都合があるという批判がありました。そこで、新法では、この点を改めて、破産申立を基準時として、危機否認できない場合を区別しました。

(6)
詐害否認の効果(168条)
財団債権性を明定しています。ただし、隠匿等の意思につき相手方が悪意の場合は現在利益がある場合は現在利益返還請求権(財団債権)となり、ない場合は破産債権となります。

(7)
否認の請求(173条以下)
否認権を行使する場合、訴訟、否認の請求、抗弁をもって行使します(173条)。
否認の請求とは、疎明によって、簡易迅速に、書面審理によって、否認権の可否を決める決定手続です(174条)。旧法では、否認権行使訴訟などの訴訟または抗弁によってしか、否認権は行使できませんでした(旧76条)。会社更生法民事再生法では、否認の請求により、簡易迅速に決定できる手続がありました。そこで、新法は、同様の制度を設けたものです。
否認の請求認容決定に対して不服のあるものは、異議の訴えを起こすことができます(175条)。

(8)
否認の登記(260条)
任意処分の場合の登記職権抹消(2項)

(9)
否認権のための保全処分(171条・172条)

相殺権
  (1)
破産債権者の債務負担に係る相殺禁止(71条)
おおむね旧法の相殺禁止規定(旧104条1号、2号)と同旨ですが、新設された部分もあります。
新設された規定、支払不能基準(71条1項2号、?@財産処分による契約上の債務負担、?A債務引受)を基準時として、相殺禁止となる場合等があります。

(2)
破産者に債務を負担する者の破産債権取得に係る相殺(72条)
おおむね旧法の相殺禁止規定(旧104条3号、4号)と同旨ですが、新設された部分もあります。
新設された規定として、支払不能基準(72条1項2号)を基準時として、相殺禁止となる場合等があります。
新設された規定として、相殺禁止の例外(相殺できる場合)として、破産者の債務者と破産者との間の契約による債権取得の例外(2項4号)が設けられました。

(3)
破産管財人の催告権(73条) 破産管財人から催告することによって相殺に期間制限を設けるものです。旧法では、相殺は期間的制限がなく無制限で認められていましたが、債権債務の早期確定のために、新法はこれを改めたものです。

(4)
破産管財人による相殺(102条)
旧法では、破産管財人からの相殺は、特定の債権者のみを利するので、許されないと解するのが多数説でしたが、新法では、債権債務関係を早期に確定する利益のために、破産管財人からの相殺を認めました。

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第5 倒産犯罪に関する改正
倒産犯罪について処罰範囲を拡大する規定を新設したり、明確化する改正がなされました。

詐欺破産罪(265条)
  破産手続開始決定があったことを客観的処罰条件として維持しています。 処罰対象行為を拡大しました。

破産管財人特別背任罪(267条)

特定債権者に対する偏頗弁済罪(266条)

破産者等に対する面会強請罪(275条)

国外犯処罰規定(276条)

両罰規定(277条)

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第6 倒産手続間の移行に関する改正
移行規定の整備
  民事再生法会社更生法に規定されています。

以下は、民事再生手続から破産手続へ移行した場合です。
  (1)
民事再生手続開始決定があった場合の破産事件の移送(民再248条)

(2)
牽連破産の場合の手続開始(申立て)の規律(民再252条)

(3)
破産債権届出の流用(民再253条)

(4)
否認・民事再生債権査定等の裁判の受継等(民再254条)


 
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【倒産法の概要】

はじめに
  1999年に成立した民事再生法は、中小企業を主な対象とした新しい再建型手続です。民事再生法を利用する主体に限定はなく、全ての個人、法人が対象であり、「町の八百屋から大企業まで」利用できます。近時の倒産の急増のため、中小企業の再建が課題となり、民事再生法が制定され、2000年4月1日から施行されました。

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倒産とは
  倒産とは何でしょうか。財産を使い果たす場合に限りません。会計上は債務超過ではなく黒字であっても、例えば売掛金があるのに支払いを受ける前に資金不足となれば倒産します(勘定合って、銭足らず)。
現象面から見ると、倒産は、支払停止の現れです。支払停止とは、債権者からの支払請求に対して、支払えないことを債務者が表明する行為です。手形不渡は、支払停止の代表例です。銀行取引停止処分を受けるのは、手形や小切手の不渡を同一手形交換所で6か月以内に2回出した場合ですが、手形などの不渡を1回でも出した場合には、原則として決済資金が足りずに支払を停止したものと受け止められます。
また、支払停止には、廃業、閉店、夜逃げなどもあります。債務の返済を一時的に猶予するよう債務者が申し入れる行為も、支払停止に当たります。

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倒産手続の種類
  倒産処理手続にはどのようなものがあるか、概観しておきましょう。
倒産手続には、目的を大別して、倒産した企業等を清算解体する清算型手続と、再建する再建型手続があります。
倒産処理の手法には、以下の種類があります。
  1 破産法(1922年制定)による破産
  2 商法(1938年制定)による特別 清算
  3 民事再生法(1999年制定)による民事再生手続
  4 会社更生法(1952年制定)による会社更生手続
  5 商法(1938年制定)による会社整理
  6 裁判所の手続によらない私的整理(任意整理、内整理ともいう)
  7 民事調停法(1951年制定)による債務調停手続
上記1から5までを倒産五法といいます。

■倒産手続の司法統計(平成4年〜) 破産 民事
再生 小規模
個人再生 給与
所得者
再生 会社
更生 会社
整理 特別
清算 特定
調停
平成4年 45,658 ー ー ー 32 26 89
平成5年 46,216 ー ー ー 44 30 80
平成6年 43,161 ー ー ー 17 35 132
平成7年 46,487 ー ー ー 36 33 163
平成8年 60,291 ー ー ー 18 20 178
平成9年 76,032 ー ー ー 31 18 172
平成10年 111,067 ー ー ー 88 24 249
平成11年 128,488 ー ー ー 37 12 343 206,997 注1
平成12年 145,858 662 ー ー 25 6 352 269,460 注2
平成13年 168,811 1,110 1,732 4,478 47 2 335 294,485
平成14年 224,467 1,093 6,054 7,444 88 4 336 416,668
平成15年 251,800 941 15,001 8,611 63 - 290 537,071
注1 民事調停・商事調停のうち、貸金業関係・信販関係の合計(地裁、簡裁)。
特定調停法施行前
注2 特定調停の他に、民事調停・商事調停のうち貸金業関係・信販の合計(地裁、簡裁)含む。

■破産件数統計(平成4年〜)

1. 破産
破産法は、清算型手続の一般法です。利用できる主体に限定はありません。件数的には倒産五法の約9割を占めています。2001年の統計によれば、16万8811件のうち16万0457件が個人の破産です。比率にして約95%です。個人の破産は、サラリーマンや主婦などだけではなく、会社の社長など役員の破産も含みます。自己破産のうち貸金業からお金を借りてしまった、破産の件数が13万7821件で、破産総件数のうち約81%です。

2. 特別清算
株式会社のみを対象とした簡易な清算型手続です。破産と異なり、清算案について出席債権者の過半数かつ総債権額の4分の3の同意が必要なため、債権者数の少ない会社の清算や、税務対策として子会社の清算に利用されています。

3. 民事再生
民事再生法は、再建型手続の一般法です。民事再生手続の利用件数は、2000年4月1日の施行から、2000年12月末までの9ヵ月だけで、合計約662件です(和議からの移行分を含む)。月平均にすると約73件となります。2001年の1年間は1110件で月平均約92件です。再建型手続のなかでは、かなり利用されています。

4. 会社更生
会社更生法は、株式会社のみを対象として再建型手続を定めています。非常に重厚な手続であり、債権者に多大な犠牲を強いるため、上場企業などの大規模な会社を主な対象に利用されています。会社更生法は業種的にはメーカー、建設業、流通 業が多く、商権、技術力や資産があるので企業努力により再建できる余地があることを示しています。

5. 会社整理
会社整理は、株式会社のみを対象とし、私的整理を法的手続に乗せるために制定されました。整理案についてほぼ全債権者の同意が必要なので、債権者数が余り多くない企業の再建にだけ利用されます。利用件数は少ないです。

6. 私的整理(任意整理)
私的整理は、特に根拠法令がないもので、債務者と債権者との個別 の話し合いによる整理の仕方です。私的整理にも、清算型と再建型があります。わが国では私的整理が伝統的に多いとされ、時間も費用も余り必要とせずに処理できる点が魅力とされています。しかし、私的整理を担当する弁護士費用は必要ですし、裁判所によらない手続であるため、強硬な債権者に対してのみ不公正な弁済が行われたり、債務者が財産隠匿を図ったり、きちんとした弁済も行わない場合もあります。
したがって、法的倒産手続をとらない残りの大部分は、任意整理ではないかという意見もありますが、実際上は、法的手続を取るだけの資力もないので、夜逃げ、放置という事例も少なくないものと思われます。

7. 債務調停・特定調停
債務調停手続は、個人、法人を問わずに利用できます。従来から主に多重債務者により貸金業関係調停として利用されてきたものであり、消費者金融などの債権者に対して、債務者が簡易裁判所において調停手続を申し立てて、弁済の猶予、分割払い、債権カットなどを話し合いによって解決する手続です。2000年に成立した「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(いわゆる特定債務調停法)により、一般 の民事調停の例外として、民事執行手続を保証金なしで停止する手続、債務者の住所地などの裁判所において一括して申し立てることができること、遠隔地の当事者が書面 により調停案を受諾するなどの特例が新設され、さらに利用しやすくなりました。債務者が支払いを全て拒否するわけではなく、債権者に一定の譲歩を求めながら債務の支払いに合意する点で、一種の再建型に位 置づけられます。ただし、債権者が拒否すれば調停案が成立しない欠点もあります。




破産法改正

1.破産手続の管轄
 親会社の破産事件等が係属している場合、当該裁判所に管轄のない子会社も同じ地方裁判所に申立てができるようになります。子会社の破産事件等が先に係属している場合も同様です(5条3項)。
 法人とその代表者についても、法人の本店所在地及び代表者の住所地のいずれかで申立てができるようになります(5条6項)。


2.自由財産の範囲
 平成15年民事執行法改正により差押が禁止される金銭が66万円となりました(民事執行法131条3号、民事執行法施行令1条)。また、本改正により、自由財産の範囲が差押が禁止される金銭に2分の3を乗じた額となったので、99万円が自由財産となります(34条3項1号)。


3.強制執行手続等の中止命令
 破産宣告前に、既になされている強制執行、仮差押え、仮処分等の中止ができるようになります(24条1項)。


4.包括的禁止命令
 前記の中止命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができない特別の事情がある場合には、包括的禁止命により、全ての債権者に対し、強制執行、仮差押え、仮処分等を禁止することができます。ただし、債務者の主要な財産に関して、保全処分または保全管理命令がなされている必要があります(25条1項)。


5.否認権行使のための保全処分
 否認権行使のため、破産宣告前であっても、第三者が所有・占有する財産に対し、仮差押え・仮処分等必要な保全処分を行なうこともできるようになります(171条1項)。


6.破産債権の届出・調査及び確定
これまで期間経過後に債権届出をしても問題はありませんでしたが、届出期間が決まっている以上、原則としてその期間内に届出をしなければならないこととし(111条1項)、やむを得ない事由があるときは、その事由消滅から1か月以内に限り、届出の追完を認めることにしました(112条1項)。


7.破産財団の換価
 担保付財産を簡単に任意売却する制度が導入されました(186条)。


8.労働債権
 破産宣告前の一定期間内に生じた給料債権については財団債権とし、優先的債権となる給料債権等を有する破産債権者が、その破産債権の弁済を受けなければ、生活の維持に困難が生じるおそれがあるときは、裁判所は、最初の配当期日までの間、管財人の申立てまたは職権でその弁済を許可することができるようになります(101条1項)。


9.租税債権
 破産宣告前の原因に基づいて生じた租税債権であって、破産宣告の日以後またはその前の一定期間内に納期限が到来するものは財団債権、これ以外の租税債権は優先的債権となります(148条1項3号、97条4号)。


10.債権者集会
 債権者数が少ない場合、または非常に多い場合には、債権者集会を開かないこともできるようになります(135条)。


11.免責
 再度の免責までの期間が10年から7年に短縮されます(252条1項10号)。


12.免責手続中の個別執行禁止効
 これまで、同時廃止可能な事案であっても、給料差押の虞のある場合は、少額管財事件とする必要がありました。免責の申立てがあり、かつ、破産終結または破産廃止の決定があったときは、免責裁判確定までの間、破産債権に基づく破産者の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分または一般の先取特権に基づく競売手続を禁止することになります(249条1項)。





破産法改正

1.破産手続の管轄
 親会社の破産事件等が係属している場合、当該裁判所に管轄のない子会社も同じ地方裁判所に申立てができるようになります。子会社の破産事件等が先に係属している場合も同様です(5条3項)。
 法人とその代表者についても、法人の本店所在地及び代表者の住所地のいずれかで申立てができるようになります(5条6項)。


2.自由財産の範囲
 平成15年民事執行法改正により差押が禁止される金銭が66万円となりました(民事執行法131条3号、民事執行法施行令1条)。また、本改正により、自由財産の範囲が差押が禁止される金銭に2分の3を乗じた額となったので、99万円が自由財産となります(34条3項1号)。


3.強制執行手続等の中止命令
 破産宣告前に、既になされている強制執行、仮差押え、仮処分等の中止ができるようになります(24条1項)。


4.包括的禁止命令
 前記の中止命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができない特別の事情がある場合には、包括的禁止命により、全ての債権者に対し、強制執行、仮差押え、仮処分等を禁止することができます。ただし、債務者の主要な財産に関して、保全処分または保全管理命令がなされている必要があります(25条1項)。


5.否認権行使のための保全処分
 否認権行使のため、破産宣告前であっても、第三者が所有・占有する財産に対し、仮差押え・仮処分等必要な保全処分を行なうこともできるようになります(171条1項)。


6.破産債権の届出・調査及び確定
これまで期間経過後に債権届出をしても問題はありませんでしたが、届出期間が決まっている以上、原則としてその期間内に届出をしなければならないこととし(111条1項)、やむを得ない事由があるときは、その事由消滅から1か月以内に限り、届出の追完を認めることにしました(112条1項)。


7.破産財団の換価
 担保付財産を簡単に任意売却する制度が導入されました(186条)。


8.労働債権
 破産宣告前の一定期間内に生じた給料債権については財団債権とし、優先的債権となる給料債権等を有する破産債権者が、その破産債権の弁済を受けなければ、生活の維持に困難が生じるおそれがあるときは、裁判所は、最初の配当期日までの間、管財人の申立てまたは職権でその弁済を許可することができるようになります(101条1項)。


9.租税債権
 破産宣告前の原因に基づいて生じた租税債権であって、破産宣告の日以後またはその前の一定期間内に納期限が到来するものは財団債権、これ以外の租税債権は優先的債権となります(148条1項3号、97条4号)。


10.債権者集会
 債権者数が少ない場合、または非常に多い場合には、債権者集会を開かないこともできるようになります(135条)。


11.免責
 再度の免責までの期間が10年から7年に短縮されます(252条1項10号)。


12.免責手続中の個別執行禁止効
 これまで、同時廃止可能な事案であっても、給料差押の虞のある場合は、少額管財事件とする必要がありました。免責の申立てがあり、かつ、破産終結または破産廃止の決定があったときは、免責裁判確定までの間、破産債権に基づく破産者の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分または一般の先取特権に基づく競売手続を禁止することになります(249条1項)。




新しい破産法の概要

1  目的


 支払不能又は債務超過にある債務者等の財産の適正かつ公平な清算を目的とする破産手続について,その迅速化及び合理化を図るとともに手続の実効性及び公正さを確保し,利害関係人の権利関係の調整に関する規律を現代の経済社会に適合した機能的なものに改める。


2  新しい破産法の要点


破産手続全体の見直し


 ○  手続の迅速化及び合理化
  ア  管轄裁判所の拡大
   ・  親子会社,会社と代表者等の事件の一体的処理を可能とするため管轄裁判所を拡大する。
   ・  大規模事件のうち,債権者数が1000人以上のものには,専門的な処理体制の整った東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に全国的な競合管轄を認め,債権者数500人以上のものには,高等裁判所所在地の地方裁判所に競合管轄を認める。
  イ  破産債権の調査・確定手続の簡素・合理化
   ・  破産債権の調査について,従来の期日方式・口頭方式に加えて期間方式・書面方式をも導入し,事案に応じた適切な処理を可能とする。
   ・  破産債権の確定について,決定による確定手続(破産債権査定決定の制度)を導入する。
  ウ  債権者集会の任意化と書面等投票制度の導入
   ・  債権者集会の開催を任意化し,事案に応じた適切な処理を可能とする。
   ・  議決権行使の機会を実質的に保障するため,書面等による議決権の行使を認める制度を設ける。
  エ  労働債権に対する許可弁済の制度の創設
   ・  労働者の生活の維持を図るため,配当手続に先立って,裁判所の許可によって労働債権に弁済をすることができる制度を設ける。
  オ  破産管財人の任意売却に伴う担保権消滅の制度の創設
   ・  破産管財人の換価権限を強化するため,破産管財人が担保権付物件を任意売却する際に,担保権を消滅させることができる制度を設ける。


 ○  手続の公正さの確保

  ア  包括的禁止命令・保全管理命令等の導入などの保全処分の拡充
   ・  債権者間の平等を図るため,債務者の財産に対する強制執行等を一律に禁止する包括的禁止命令や保全管理人による債務者の財産の管理を命ずる保全管理命令の制度を設ける。
  イ  事件関係書類の閲覧・謄写手続の整備
   ・  手続の透明性確保のため,事件関係書類の閲覧・謄写手続を整備する。
  ウ  債権者委員会の制度の創設
   ・  破産債権者の意思を破産手続に反映させる途を拡大するため,債権者委員会の制度を設ける。
  エ  破産者の重要財産開示義務を創設
   ・  破産者の説明義務を強化するため,破産者に対し,その有する不動産,現金,有価証券等の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない義務を課す。
  オ  破産会社の役員責任査定決定の制度を導入
   ・  破産会社の役員に対する責任の追求を容易にするため,決定による損害賠償請求権の査定の制度(役員責任査定決定の制度)を導入する。


個人の破産・免責手続の見直し


  ア  自由財産(破産者が自ら管理処分し得る財産)の範囲の拡張
   ・  破産者の経済生活の再生に資するよう,自由財産となる金銭の範囲を標準的な世帯の必要生計費の3か月分に拡張するとともに,裁判による自由財産の範囲の拡張を可能とする。
  イ  破産手続と免責手続との一体化
   ・  破産手続開始の申立てがあれば,原則として免責許可の申立てもあったものとみなして,破産手続と免責手続とを一体化する。
  ウ  免責手続中の強制執行等の禁止
   ・  免責手続終了までの間の破産者の生活の維持を図るため,免責手続中の破産者の財産に対する強制執行等を禁止する。
  エ  非免責債権の拡張
   ・  特に要保護性の高い生命侵害等による不法行為債権,養育費債権を非免責債権に加える。
  オ  裁判所等の免責に関する調査に対する破産者の協力義務の創設
   ・  裁判所等の免責に関する調査を実効性あるものにするため,破産者にこれに対する協力義務を課す。


倒産実体法の見直し


  ア  労働債権の一部の財団債権化
   ・  破産手続開始前3か月間の給料債権,退職前3か月間の給料の総額に相当する額の退職手当の請求権を財団債権とする。
  イ  租税債権の一部の破産債権化
   ・  破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権については,破産手続開始当時,納期限が到来していないもの及び納期限から1年を経過していないものを除き,優先的破産債権とする。
  ウ  賃貸人が破産した場合の賃借人の保護の強化
   ・  賃借人が対抗要件を備えている場合には,破産管財人は賃貸借契約を解除できないものとして,賃借人の保護を図る。
  エ  適正価格売却の否認リスクの軽減など否認制度の整備
   ・  適正価格による不動産等の処分に関する否認の要件を限定・明確化するなど,否認リスクを軽減する。


3  新しい破産手続の流れ




4  新しい破産法Q&A


 Q1  破産手続とは,どのような手続ですか。
 破産手続は,支払不能又は債務超過の状態にある債務者等の財産を破産管財人が換価して,総債権者に対し公平な弁済をする裁判上の手続です。
 なお,破産手続に付随して債務者の負債を免除するための免責手続が設けられています。


 Q2  なぜ,破産法を見直すのですか。
 破産法は,大正11年に制定され,昭和27年に免責制度を導入する等の一部改正がされましたが,その後は,本格的な見直しがされていません。そのため,手続全体が厳格にすぎて迅速性に欠け,利害関係人の権利関係の調整に関する規律も現代の経済社会に適合しないとの批判がされています。また,破産した個人の債務者について経済生活の再生の機会を確保するための方策をより一層講ずる必要があると指摘されています。そこで,破産法を全面的に見直すことにしたのです。


 Q3  破産法の見直しにはどのようなメリットがあるのですか。
 バブル経済崩壊後,社会経済構造の変化等に伴い,破産事件の件数は増加し,特に,個人破産事件の急増は社会問題化しています。今回の破産法の見直しにより,(1)迅速かつ公正に財産の清算がされるようになり,(2)個人が破産した場合の再起が容易になり,(3)企業が破産した場合の労働者の有する債権の保護も図られる等,国民生活におけるセーフティーネットの拡充が図られることになります。


 Q4  自由財産の範囲については,どのような見直しがされていますか。
 破産した場合であっても破産者の手元に残される財産を自由財産といいます。従来の破産法においては,自由財産となる金銭の額については「標準的な世帯の2か月間の必要生計費を勘案して政令で定める額」(66万円)とされていました(平成16年4月1日から)。新しい破産法では,破産者の生活の維持を図るため,標準的な世帯の必要生計費の3か月分に相当する額(99万円)の金銭を自由財産とし,破産者の経済的生活の再生の機会を更に確保することとしています。また,破産者の生活の状況や破産者が収入を得る見込みの有無等の個別の事情に応じて,裁判所が,自由財産の範囲を拡張することができる制度を創設し,破産者の生活の維持を図るとともに,その再起に資するようにしています。


 Q5  自由財産の範囲の拡張の裁判によって,どのような財産が自由財産となるのですか。
 自由財産の範囲の拡張が認められる場合としては,まず,必要生計費の不足を補うため,自由財産となる金銭の額が引き上げられることが考えられます。また,そもそも破産者の手元に自由財産の対象となる現金がない場合には,本来,自由財産の対象とされていない預金債権等を自由財産とすることも考えられます。さらに,破産者の生活状況や職種を考慮して,必要と認められる場合には,自動車等を自由財産とすることも可能です。
 ただし,どのような財産が自由財産となるかについては,裁判所の判断によることになります。


 Q6  破産手続と免責手続が一体化されたと聞きましたが,どのような点で一体化されたのですか。
 従来の破産法は,破産宣告があった後,破産の申立てとは別に,免責の申立てをする必要がありましたが,新しい破産法では,債務者が破産手続開始の申立てをした場合には,原則として,当該申立てと同時に免責許可の申立てがあったものとみなすものとしています。さらに,この場合には,破産手続開始の申立ての際に提出する債権者一覧表を債権者名簿とみなすこととし,別個に債権者名簿の提出を要しないものとして,破産手続と免責手続とを申立てにおいて一体化しています。


 Q7  破産手続において,労働債権はどのように取り扱われるのですか。
 給料債権,退職手当の請求権等の労働債権については,実体法上一般の先取特権が付与されており,従来の破産手続においても,このような労働債権の実体法上の優先権を尊重して,その全額が優先的破産債権とされていました。しかしながら,このような取扱いに対しては,破産手続が財団不足によって廃止された場合には,労働債権については全く配当がされない結果となる等,労働債権の保護が十分でないとの指摘がされていました。そこで,新しい破産法では,労働債権のうち,(1)未払給料債権については,破産手続開始前3か月間に生じたものを,(2)退職手当の請求権については,原則として退職前3か月間の給料の総額に相当する額を,それぞれ財団債権とすることにしています。これにより,労働債権を有する者は,財団債権とされる部分については,破産手続開始後破産管財人から配当手続によらずに弁済を受けることができることになります。


 Q8  いわゆるパートタイマーやアルバイト等の正社員以外の者の給料債権等は,どのように取り扱われるのですか。また,形式上は雇用契約以外の契約関係(請負契約等)ですが,労務の提供によって生活の糧となる金銭を得ている者が有する債権はどうですか。
 新しい破産法において,その一部が財団債権とされている「給料の請求権」とは,労働の対価として使用者が労働者に対して支払うすべてのものをいい,賃金,給料,手当,賞与等その名称の如何を問いません。したがって,いわゆるパートタイマーやアルバイト等の正社員以外の者はもとより,法形式上は,請負契約や委任契約等に基づくものであっても,労務の提供の対価として金銭を得ていると認められる場合には,この者の有する債権は「給料の請求権」に該当し,その一部につき財団債権として保護することができるようになります。


 Q9  破産管財人に情報提供努力義務が課せられたと聞きましたが。
 会社等が破産した場合には,破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権については,これらを有する労働者が裁判所に債権の届出をする必要がありますが,その届出をするために必要な賃金台帳などの資料の多くは会社側に存在し,必要となる情報等が必ずしも労働者側に十分確保されていないため,債権届出に困難を伴う場合も少なくないとの指摘がされていました。そこで,新しい破産法では,会社側に存在する資料等を引き継ぐ立場にある破産管財人は,破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権を有する者に対し,破産手続に参加するのに必要な情報を提供するよう努めなければならないものとして,債権届出に関する情報提供努力義務を課すものとしています。


 Q1 0 破産会社の労働組合は破産手続にどのように関与することができますか。
 新しい破産法においては,裁判所は,(1)破産手続開始の決定をした場合には公告すべき事項を,債権者集会を開催する場合にはその期日を,それぞれ破産者の使用人の過半数で組織する労働組合(なお,これに該当する労働組合がないときは,破産者の使用人の過半数を代表する者の手続関与が認められます。)に通知しなければならないものとし,また,(2)営業譲渡の許可をする場合には,労働組合等の意見を聴かなければならないものとしています。このほか,新しい破産法においては,新たに代理委員の制度が設けられており,これにより労働組合が代理委員として労働債権者のために破産手続に属する一切の行為をすることが可能となります。


 Q1 1 新しい破産法では,倒産犯罪についてはどのような見直しがされたのですか。
 新しい破産法では,倒産犯罪について,(1)従来の犯罪類型を整理する等して,全体として整合性のとれたものとする,(2)破産者が破産手続開始時における重要財産開示義務に違反した場合を処罰する規定等を新設する,(3)破産手続開始後に,手続外で破産債権の回収を図る目的で破産者等に対して面会を強請し,又は強談威迫する行為を処罰する規定を新設する等の見直しを行っています。なお,(3)の破産者等に対する面会強請等の罪では,その適用場面を個人債務者が破産した場合に限定しています。したがって,法人である企業が破産した場合に,労働者が労働債権の確保のために行う正当な行為がこの罪の対象となることはありません。


 Q1 2 破産手続と民事再生手続や会社更生手続との違いを教えてください。
 破産手続は,経済的に破たんした企業等の財産をすべて換価し,債権者に配当等を行う清算型の手続であり,民事再生手続及び会社更生手続は,経済的苦境にある企業等について債務の減免等を行うことにより,その経済的な立ち直りを図る再建型の手続です。


※ 破産手続と民事再生手続及び会社更生手続との比較(概要)   破産手続 民事再生手続 会社更生手続


破産法
(平成16年法律第75号)
民事再生法
(平成11年法律第225号)
会社更生法
(平成14年法律第154号)

的 債務者の財産等の清算 事業又は経済生活の再生 事業の維持更生

清算型手続
 裁判所の監督下、破産管財人により、債務者の総財産(個人の場合には自由財産を除く。)を換価し、配当を通して債権者に公平に分配する。 再建型手続
 裁判所の監督下、基本的に債務者本人が事業及び経済生活を継続し、可決・認可された再生計画に従って事業又は経済生活の再建を図る。 再建型手続
 裁判所の監督下、管財人が会社の事業の経営及び財産の管理処分にあたり、更生計画の可決・認可及びその遂行を通じて、事業の再建を図る。

象 限定なし(相続財産も対象となる。) 限定なし(事業又は経済生活の主体となり得る者)
 ※特に個人を対象とする手続(小規模個人再生手続及び給与所得者等再生手続)がある。 株式会社のみ






破産管財人 再生債務者
 ※監督委員による監督の制度がある。
 ※再生債務者の財産の管理処分が失当であるとき等事業の再生のために特に必要があるときは、管財人による管理が裁判所により命ぜられる。 管財人



因 (1)支払不能(=支払能力の欠如により弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない状態にあること)
(2)債務者が法人である場合には支払不能のほか債務超過(=その負担する債務のすべてをその有する財産のすべてをもって完済することができない状態にあること)もまた開始原因となる。 (1)破産の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
(2)事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき (1)破産の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
(2)弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるとき




分 (1)破産債権(配当を通じてのみ権利行使可)
(2)財団債権(随時弁済する。) (1)再生債権(再生計画によってのみ弁済等可)
(2)一般優先債権(一般の先取特権その他の優先権のある債権。Ex. 労働債権、租税債権など)(随時弁済する。)
(3)共益債権(随時弁済する。)
(4)開始後債権 (1)更生債権(更生計画によってのみ弁済等可)
(2)更生担保権(更生会社の財産につき存する担保権によって担保される債権。更生計画によってのみ弁済等可)
(3)共益債権(随時弁済する。)
(4)開始後債権






い 破産手続によらずに行使することができる(別除権)。破産手続において破産債権として行使できるのは、被担保債権のうち担保権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分の額に限られる。 再生手続によらずに行使することができる(別除権)。再生手続において行使できるのは、被担保債権のうち担保権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分に限られる。 更生手続中は行使することができない。更生会社の財産につき存する担保によって担保される債権で、担保目的財産の価額に相当する部分は、更生担保権として、更生債権より優先的に扱われる。担保権の実行により、更生計画によらず満足を受けることはできない。